北原里英、“女優道”への歩み 白石和彌監督作『サニー/32』は“映画と観客”の関係を再考させる

 そのキャラクターと演技によってアイドルとしてのイメージを崩していく“きたりえ”と、現役アイドルを“アイドル的なもの”として登場させ、映画を作り上げた白石監督。ストーリーが進行すればするほど赤理はサニー=アイドルとしてさらに神格化されていき、演じるきたりえはもはやアイドルではなくなっていくようにも思える。

 本作は2部構成の様相を呈している。第1部はサニーという“アイドル誕生”までを描き、第2部はそのアイドルの“繁栄と衰退”を描く。どちらにも盛大なショーまで用意されている。そして、若松映画に見られたような広大で寒々しくスペクタキュラーなロケーションに、“きたりえ”というアイドルを投じることで、この映画の“見世物性”はより強固なものとなる。

 本作は見紛うことなきアイドル映画であり、同時に紛れもない白石映画なのである。「待ってて、必ずそこに行くから。抱きしめることはできるから」と、かつての教え子のことを想う彼女の声とともに、スクリーンに活写される力強いまなざし。彼女のことなら信じてみてもいいのではないか。彼女のこととは、赤理のことであり、サニーのことであり、もちろん“きたりえ”のことだ。“アイドル女優爆誕”を目撃したいま、いちファンとしても、きたりえの“女優道”への歩みを、力強く後押ししていきたいものである。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『サニー/32』
全国公開中
出演:北原里英、ピエール瀧、門脇麦、リリー・フランキー、駿河太郎、音尾琢真(特別出演)、山崎銀之丞、カトウシンスケ、奥村佳恵、大津尋葵、加部亜門、松永拓野、蔵下穂波、蒼波純
スーパーバイザー:秋元康
脚本:高橋泉
音楽:牛尾憲輔
監督:白石和彌
主題歌:「pray」牛尾憲輔+田渕ひさ子
企画・製作幹事:日活
製作:日活・東映ビデオ・ポニーキャニオン
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
配給:日活
協力:新潟県フィルム・コミッション協議会・長岡フィルムコミッション
(c)2018『サニー/32』製作委員会
公式サイト:http://movie-32.jp/

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