“人肉食”は物語にとって味付け? 『RAW~少女のめざめ~』は誰もが共感できる青春映画だ

 本作は人肉を食らうというキャッチーな触れ込みだが、実際のところ、人肉食は物語にとって味付け程度だ。グロテスクなシーンも少なく、ショックを求めて臨めば、むしろ食い足りない印象を抱くかもしれない。ここで描かれるのは、誰もがある程度は理解・共感できる青春ドラマだ。

 しかし、そんなジュスティーヌの前に、三つ目の恐怖がやってくる。それは……本編を見てからのお楽しみだろう。異形の青春の果て、少女の瞳に何が映るか? 彼女の表情の変化に注目してほしい。多大な犠牲を払って、誰でもない「自分」を掴み取った者にとって、これほどの恐怖はないだろう。そして人肉食の部分を自分にとって身近なモノに置き換えれば、きっとその表情に共感できるはずだ。哀しく滑稽で苦い、青春映画の快作である。

『RAW〜少女のめざめ〜』予告編

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『RAW〜少女のめざめ〜』
2月2日(金)より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
監督・脚本:ジュリア・デュクルノー
出演:ギャランス・マリリエ、エラ・ルンプフ、ラバ・ナイト・ウフェラ
ユニバーサル映画
配給:パルコ
原題:『GRAVE』/英題『RAW』/2016年/フランス・ベルギー/98分/カラー/音声:5.1ch/R15
(c)2016 Petit Film, ouge International, FraKas Productions. ALL IGH E E VED
公式サイト:raw-movie.jp

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