木南晴夏、「このアホンダラ!」の破壊力! 『越路吹雪物語』で見せた二面性

 帯ドラマ劇場『越路吹雪物語』(テレビ朝日)は、主役こそ後の越路吹雪である美保子(瀧本美織)だが、その盟友であり日本を代表する作詞家・岩谷時子(木南晴夏)も、もう一人のヒロインとして丹念に描かれている。第3週では、雑誌『歌劇』編集部に入社した時子が、美保子と再会。編集者としても、仕事を覚えていくが、自他共に認めるほどの“塚ファン”である時子が、先輩・森継男(崎本大海)に思いをぶちまけるシーンは、多くの視聴者の共感を呼んだ。

 『歌劇』編集部も戦争の影響を受け、兵隊として人手を取られていた。そこで抜擢されたのが、出兵することのない女性の時子だった。「宝塚の素晴らしさを伝える雑誌作り」に時子は意欲を見せる。編集長の平山文章(飯田基祐)は、読者ページの投稿で常連だった時子を編集部にスカウトした張本人だ。平山は入社したての時子を“お時”と呼んで可愛がり、早速読者ページを任せることに。その扱いを不満に思っていたのが、時子の先輩であり、指導役の森。話し出すと二言目には、「これだから女は」と愚痴を漏らすことも多く、時子とは馬が合わない関係性にある。

 事の発端となったのは、森が取材終わりに編集部のデスクに鞄を叩きつけ、怒りに任せて愚痴を話し始めたこと。森は、月組の琴衣はるかが取材に遅刻をしてきたことに腹を立てていたのだ。前回は遊んでいたのが理由で遅れてきたと話す森が、完全に上から目線で「これだから女は困るんだよ。ニッコリ笑って謝ればなんでも済むと思って!」と怒鳴り散らす。それに対して時子が軽く注意をすると、ムキになった森が「女の味方をするよな。女はつるむのが得意だからな!」と返す。ここで、時子の怒りは沸点を迎え、「そういう問題じゃないでしょ!」と我を忘れて森に思いの丈をぶちまけるのだ。

「女だとか男だとか言う前にみんな一人の人間なんですよ!」「私もこの仕事を腰掛けでやってるわけじゃありません! みんな真剣に生きてるんです!」「それを勝手にグチグチ言ってるんじゃないわよ! このアホンダラ!」

 あまりの気迫に、ポカンとする森。タイミング良く部屋に入ってきた編集長が、「お時……落ち着け」となだめ、やっと我に帰る時子だった。普段は冷静沈着な時子だが、芯となる意見はしっかりと胸に止め、好きなものに対しては我を忘れるほど没頭する。そんな時子の二面性を表したシーンであり、木南晴夏による捲し立てるセリフ、逆上した後、我に帰る時子の表情のギャップが光る演技であった。

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