大森南朋が語る、念願の『アウトレイジ 最終章』出演への思い 「僕にとって本当に宝物」

「北野組には“完全なる映画の現場”という雰囲気がある」

ーー今回、『Dolls[ドールズ]』と『アキレスと亀』に続いて、3度目の北野監督作品出演となりますが、過去に出演した2作とは現場の雰囲気も違ったのでは?

大森:北野組の作品によく出演していると言われがちなんですが、『Dolls[ドールズ]』は少ししか出演していなくて、『アキレスと亀』はほぼ1日の撮影でしたので、過去2作出演していると言ってもトータルで4日間くらいなんです(笑)。確かに今回はバイオレンス映画ということもあり、僕が出演した過去2作とは作品自体の雰囲気は異なりますが、北野組の雰囲気という意味では変わらないと思います。本当に少ししか知らないですけど、基本的に同じかと思います。北野組には監督が目指しているものをきちんと理解しているスタッフが集まっていますし、キャストもいろいろなことをある程度理解した上で参加していると思うので、構造がすごくしっかりしているんです。監督を頂点に、スタッフやキャストがしっかりと動いていくという。その上スピードが早いんです。テスト1回、本番1回という世界で、撮影がとにかく早く進んでいく。美術さんや照明さんも含めて、撮影のセッティングも全部スピードが早い。だから映画の現場では珍しく、巻いて終わるんです。この構造は今ほかの映画では見られないくらいで、“完全なる映画の現場”という雰囲気があります。

ーー出演発表の時に「念願叶ってバイオレンス。念願叶ってアウトレイジ」というコメントを出していましたが、北野監督のバイオレンス映画には思い入れがあったんですか?

大森:初期の『3-4x10月』の頃から「いつか北野監督のバイオレンス映画に出たい」という思いをずっと持ちながら俳優をしていました。自分はその頃20代前半でしたが、ちょうど日本映画を観て役者をやろうと思った時期だったんです。その頃はまだ端役ばかりで、北野監督の映画に出演できるなんて夢のまた夢でした。

ーー今回の『アウトレイジ 最終章』には、そんな初期のバイオレンス映画に通じる部分もありますね。

大森:そうなんですよ。『ソナチネ』風だなと思いました。集大成といいますか、『アウトレイジ』シリーズの最後を飾る作品で、北野監督のバイオレンス映画のいいとこ取りという印象も受けました。

ーー改めて、大森さんにとって北野武監督はどのような存在ですか?

大森:唯一無二です。映画の作り方として真似できるレベルではないところに達している。『アウトレイジ』シリーズも登場人物が多くて非常にややこしい話ではあるのですが、話がスッと入ってくるんです。脚本段階での裏の構造の完成度が度肝抜くほど高い。それはやはり北野監督が作り上げてきた世界だと思いますし、一ファンとしての感想になってしまいますが、本当にスゴいなと。映画はもちろんそうですけど、北野監督はとんでもない人だと思います。ちょうど青年期にハマってしまったということもあり思い入れも強いです。

ーー役者としてのビートたけしさんとの共演についてはどうですか?

大森:役者としてのたけしさんも子どもの頃から観てきていますし、しかも監督が主人公を演じているわけですから、もちろん緊張はします。僕たちは良くも悪くもその中で普通に芝居をしなければいけなくて。北野組では、テストは代役の方が演じて、本番でたけしさんが演じられるんです。だから本番になると緊張感がグッと増す感じはありました。

ーー冒頭の海辺のシーンや、終盤のマシンガンをぶっ放すシーンなど、たけしさん演じる大友と大森さん演じる市川のシーンは特に印象的でした。

大森:僕にとって本当に宝物です。マシンガンをぶっ放すシーンの現場では、天井に鏡のようなものがついていて。そこで天井を見上げてみたら、マシンガンを持って並んでいるたけしさんと僕が映っていたんです。客観的に見たらこれスゴいなと(笑)。夢が叶ってしまったという感じでした。本当に自分にとって大きな経験になりました。これだけ熱望していたシリーズに出演させていただくことができたので、そろそろ憧れだった“北野組常連俳優”と呼んでいただいてもいいのかなと(笑)。いつか子孫に観せたいぐらい、自分にとって自慢の作品になりました。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『アウトレイジ 最終章』
2017年10月7日(土)、全国公開
監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一
出演:ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、塩見三省、白竜、名高達男、光石研、原田泰造、池内博之、津田寛治、金田時男、中村育二、岸部一徳
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野
(c)2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
公式サイト:outrage-movie.jp

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