『愛してたって、秘密はある。』は作り手の意図を超えた? 秋元康が仕掛けた“企画”を読む
では、『愛してたって、秘密はある。』はどうなのか? 福士蒼汰が演じる黎を筆頭に、本作に登場する秘密を抱えた人々は、週刊文春の不倫報道に怯える芸能人の内面を覗き見ているようだ。一見するとミステリードラマのように見えるが、描かれているのは秘密を抱えた人間の追い詰められる様子を実況中継しているかのような作りとなっていて、リアリティーショーを見ているかのような下世話な楽しさがある。
その意味でも、本作もまた、「企画」としてよくできたドラマなのだが、終盤にさしかかると、作り手の意図を超えた面白さも見え始めている。今まで少女たちの物語を企画してきた秋元康だが、今作では福士蒼汰という男性俳優が主人公の物語を企画している。母親を守るために父親を殺してしまった少年の葛藤というエディプス・コンプレックスからスタートした本作には、父と子の葛藤がエピソードの節々に織り込まれており、弱い父親が振りかざす暴力が「呪い」のように子どもたちに連鎖していく姿は見ていてゾっとするものがある。これは秋元康ではなく、脚本家の桑村さや香の功績なのかもしれないが、黎が抱える内なる暴力性に怯える様子に、現代の男たちが抱える困難が見えるのが、本作の隠れた面白さだと言えよう。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
『愛してたって、秘密はある。』
日本テレビ系にて 毎週日曜22:30~
出演: 福士蒼汰、川口春奈、鈴木浩介、賀来賢人、白洲迅、柄本時生、吉川愛、山本未来、堀部圭亮、岡江久美子、遠藤憲一、鈴木保奈美ほか
企画:秋元康(兼・原案)
演出:河合勇人、佐久間紀佳
脚本:桑村さや香
プロデューサー:福士睦、鈴間広枝、柳内久仁子
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/aishitetatte/