萩原みのり×久保田紗友×菊地健雄『ハローグッバイ』鼎談 「友達とは何か」

 久保田「演技をしていてもすごい安心感がありました」

菊地:僕からふたりに質問していいですか。萩原さんは、好きな葵のシーン、逆に久保田さんは好きなはづきのシーンを教えてもらっていいですか。

久保田:葵がはづきからペットボトルの水を渡されるところが好きです。悦子さんのために3人で出かけて、それまでとは違う関係性の象徴的なシーンになっている気がするので。

萩原:私もそのシーンだと思ってた。

菊地監督:コンビネーションいいな、君ら(笑)。

萩原:それまでしっかりした強い子だった葵が、初めて弱い部分を悦子さんに見せていた。それをちょっと離れたところからはづきは見ている。それまでふたりの間には“友情”と言えるものがあったか分からないですけど、あの水をあげたところで確実に何かが芽生えた。

久保田:初めて葵として、はづきにちょっと身を預けることができた。今までずっと一人だった葵が、はづきに救われた瞬間だったと思います。演技をしていてもすごい安心感がありました。

萩原:そして、何と言っても悦子さんを演じたもたいさん。このシーンで見せてくれた悦子さんの笑顔が本当に素敵で。あのときの悦子さんの顔は、ずっと忘れないと思います。はづきと葵、悦子さんの3人が目を合わせて微笑んでいる瞬間が、すごく特別な時間に感じられました。

 萩原「あのとき感じていた“モヤモヤ”をぶつけることができた」

――「友達とは何か」という問いが本作にはあります。おふたりは改めてどう考えますか。

久保田:すごく難しい質問ですよね。撮影の前も後も色々考えたんですが、はっきりした答えはずっと出ないと思っています。私にとっての友達は、自分もその子のために無条件で何かしてあげたいって思う子かな。悩んでいたら、最終的な答えを選ぶのはその子だけど、選択肢は一緒に考えたい。一緒にいて楽しい友達と、本当に自分の痛い部分まで話せる友達、それぞれいます。友達について考えるときに思うのは、本当に自分の周りには、支えてくれる人がたくさんいるんだなって(笑)。

萩原:自分が楽しいときって、誰と会っても楽しいと思うんですよね。でも、すごくつらいときにふと思い出せる人、思いを共有できる人が一番大切な存在なのかなって。友達だからこうしないととか、友達だからこうだよね、というのはないと思うし、過ごした時間の長さや共有した思い出の数だけで友達が決まるわけでもない。しばらくずっと会っていなくても、ふとしたときに相手のことを思える、そんな関係性の友達もあるはず。そんな友達の在り方を、この映画を通して教えてもらいましたし、自分自身の心も軽くなりました。できれば中高生の頃に出会いたかったです。でも、出会えなかったからこそ、あのとき感じていた“モヤモヤ”をはづきの中にぶつけることができたのかなと思います。「友達とは何か」、その答えは映画を観ても出るわけではありません。でも、「友達」という言葉に詰まっているいろんなものが、映画を観ていただければ伝わるんじゃないかなと思っています。

菊地:今のところ自分が映画をつくる際には“ドラマ”が必要で、ドラマは人と人との間にしか生まれないと僕は考えています。人と人の関係性の中で生まれるエモーショナルな心の動きを、言葉ではない、映像として、撮っていくところに映画の魅力があるんじゃないかと。そして、映画を作る行為自体も、人と人との関係性から生まれるエモーショナルなものです。決してひとりでは作ることができない。その意味で、映画を作るキャスト・スタッフ、みんなが“友達”になる必要はないんですが、ふとしたときに思い出し合える、再会したときに喜び合える、そんな関係性を毎回作れたらと思っています。「友達とは何か」の答えにはなっていないですが(笑)。

(取材・文=石井達也)

衣装:萩原みのり/イジット、メローバイエンチャンテッド
衣装:久保田紗友/ネセセア、エンチャンテッド

『ハローグッバイ』予告編

■公開情報
『ハローグッバイ』
渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中
出演:萩原みのり、久保田紗友、渡辺シュンスケ、渡辺真起子、小笠原海(超特急)、岡本夏美、松永ミチル、望月瑠菜、桐生コウジ、池田良、川瀬陽太、木野花、もたいまさこ
監督:菊地健雄
脚本:加藤綾子
主題曲・音楽:渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)
製作・提供:Sony Music Artists Inc.
配給:アンプラグド
(c)2016 Sony Music Artists Inc.
公式サイト:hello-goodbye.jp

 

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