橋本環奈、とうとう“千年に一人の美少女”のイメージ破るーー『銀魂』神楽役の振り切れた演技

 キャストの再現率の高さと面白さで大ヒットとなった、小栗旬主演、福田雄一監督の映画『銀魂』が、8月3日より東京を皮切りに5大都市で応援上映が開催されている。改めてこの映画を大ヒットに導いた貢献者を考えると、アイドル界の歴史を塗り替えたと評判の橋本環奈ではないだろうか。現在放送中のドラマ『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)でもヒロインを務めるなど、「アイドル」から「女優」へと進化の真っ最中である橋本。彼女が『銀魂』の振り切れた演技で開花させた、女優としての新たな魅力をについて考察してみたい。

 橋本と言えば、『銀魂』でもネタにされていたが、2013年にイベントで踊っている最中の写真、奇跡の一枚が全国に拡散され、“千年に一人の美少女”アイドルとして一気に有名人になるという異例な売れ方をした元ローカルアイドルだ。とは言え、今まではアイドルグループとして活動していたがゆえに、実際のポテンシャルは未知数であり、また実物よりもネットの情報で目にする事が多かっただけに、どこか現実味のない、アイドルの本来の意味である偶像という言葉にピッタリの存在だった。

 女優としては、“あの天使すぎるアイドルが出演”というお客様扱いをされることが多い印象の中、2016年の映画『セーラー服と機関銃-卒業-』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その際にスピーチで「この賞を励みとして、謙虚に誠実に映画界と演技の道に人生を捧げる覚悟で、これからも日々精進して参りたいと思っています」と女優としての意気込みを語っていた。その後、高校を卒業し、所属していたアイドルグループRev. from DVLも解散。演技の道に人生を捧げる覚悟が決まってから初めて公開される出演作が、今回の『銀魂』である。

 さて、橋本が演じる神楽は、万事屋の紅一点であり、『銀魂』のヒロイン。宇宙最強を誇る絶滅寸前の戦闘種族・夜兎族の生き残りの少女で、人気キャラクターの一人だ。 チャイナ服を着て、片言の日本語を話し、語尾には疑似中国語の「~アル」「~ネ」を付ける。可愛い容姿だが、かなりの暴言を放ち、大食いで怪力で戦闘能力も高い。また神楽は「ゲロイン」と呼ばれ、一説によるとジャンプ史上初の“ゲロ”を吐いた“ヒロイン”なのだとか。福田ワールド以前に、この設定のキャラを演じるのだから、当然今までのアイドル像を一気に覆すことになる。

 実際に、白目で鼻をほじったり、これでもかと大食いをして豪快に吐いたり、激しいワイヤーアクションをこなしたりと、橋本が出演者の中で一番体を張っていた印象だ。予想を遥かに上回る振り切れた演技で、観客を大いに驚かせた。“千年に一人の美少女”がここまでやるかというギャップの面白さもあるが、偶像的で何をしてもかわいい橋本だからこそ、この神楽というキャラを受け止められたとも言える。ちなみにオレンジヘアも地毛だそうだ。

 『銀魂』のジャパンプレミアで橋本は「監督が演ってくれる表情をどれだけ忠実にできるのかということをいつも考えていました」とコメント。ウォーカープラスのインタビューでは「鼻をほじるシーンは、福田監督から『奥まで、深くえぐれ』と言われました(笑)。小指でえぐりました。他の役者さんもみなさん、『こんなことまでやるんだ!』と思うようなことばかりされていました。私もそれを楽しんでいたところがあって、構えたりすることもありませんでした」(引用:小栗旬&菅田将暉、橋本環奈の鼻ほじは「アイドル界の歴史を変えた」)と、とにかく福田監督の演出には素直に応えて演じていた様子が伺える。

 同インタビューで小栗と菅田将暉は、「(橋本は)弾けてたな。こんな子だと思ってなかったですよね」(菅田)、「全然、思ってなかった。たまらないよね」(小栗)、とコメント。現在、俳優として1、2を争うほど人気と実力、そして出演数を誇る二人に対して、橋本は、全く気負わずに演技をしていたようだ。その度胸からは、女優としても逸材であることを感じさせる。

 また、小柄で健康的な神楽と、足が長くてスタイルが良すぎるまた子(菜々緒)の対決シーンは秀逸だ。神楽が「パンツ染みてるよー?」と煽り、それに対してまた子が「染みてるわけねーよ!」とムキに返すやり取りは、真逆のスタイルだからこそ面白い。

 「役に入り込むタイプなんです」という橋本は、以前からポテンシャル自体はあったのかもしれない。だが、丁寧に扱われ過ぎて、本来の力を発揮できていなかったのではないだろうか。今回の『銀魂』で福田監督が、橋本をおもいっきりイジって振り切らせたことで、殻を破ったのは間違いないだろう。

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