葉山奨之、“何だか憎めない”笑顔が武器に 『僕やり』マル役から漂う不思議な愛嬌

 現在放送中のフジテレビ系火9ドラマ『僕たちがやりました』。視聴率こそ右肩下がりとなっているが、初回から原作漫画の世界観を再現した作り込みの巧さと、テレビドラマの枠を超えた過激な描写で話題沸騰。今クールの連ドラの中で、もっとも話題を集めている作品であることは間違いない。

 “そこそこ”で生きていたいと願う高校生のトビオ(窪田正孝)を筆頭にした若者たち。彼らが近隣のヤンキー校への復讐のために仕掛けたイタズラが、10名もの死者を出す爆発事件へと発展。現実を直視できずに逃亡を続ける彼らの、友情や恋模様を描きだした青春サスペンスなのだ。有望な若手キャストのアンサンブルに注目が集まる中、誰よりも異質な存在感を発揮しているのが、丸山友貴、通称“マル”だ。

 演じている葉山奨之自身も、「一番キャラ立ちしていて、演じ甲斐がある役」だと語るこのキャラクター。爆発事件につながるきっかけを作った、根暗ないじめられっ子キャラだった第1話では、主人公たちのグループ内での弟分的なポジション。事件のニュースを見ながら不気味な笑みを浮かべて以降は、それまでのイメージを完全に覆すクズっぷりを遺憾なく発揮するのだ。

 マルは口封じのためにパイセンがトビオたち3人に配った金に異様に執着し、トビオを騙して奪い取る。そして、これまで溜めに溜めた鬱憤を晴らすかのように、熱海のホステスに使い込んだ。ひとしきり金を使い果たした彼は、東京に戻って今度は伊佐美(間宮祥太朗)の金まで狙うのである。

 “さとり世代”を絵に描いたようなキャラクターたちの中で、ひとりだけ強欲さを見せつけるマル。原作では徹底したクズであった彼だが、ドラマでは私利私欲のために暴走する姿の中に、不思議な愛嬌を発しているのだ。それはこのキャラクターが、抑圧から解放された若者を実直に描いているからでもあり、また葉山奨之という役者の笑顔に、“何だか憎めない”得な雰囲気が漂っているからでもあろう。

 元々は原作のファンで、演じるならば絶対にマル役がいいと思っていたとインタビューで語っている彼は、2011年に俳優デビューを果たした現在21歳の注目株。デビュー作となったドラマ『鈴木先生』(テレビ東京)では、回想シーンに一瞬だけ登場するヤンキー風の生徒を演じていた。その翌年には『トテチータ・チキチータ』で映画初出演を果たす。前世で家族だった、世代の異なる4人の男女の交流を描いたファンタジックな作品で葉山は、現世では高校生・前世では家族の大黒柱という何とも複雑なキャラクターを演じ抜いたのである。

 その後ブレイクのきっかけとなったNHK朝の連続テレビ小説『まれ』を皮切りに、吹奏楽の天才的なセンスを持つ奏者を演じた映画『青空エール』から、月9ドラマ『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)ではヒロインの弟を少しだらしなく演じ、頭角を現した。そして、極め付けはここ数年のドラマで最も流行した『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)への出演であろう。

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