誰の心にも“美都”がいる 『あなたのことはそれほど』は最も人間らしいドラマだ

 最終回、彼らはどんな選択をするのだろうか。登場人物たちはそれぞれにいい子、いい人であり、優しい人、正しい人だ。だがそれは、有島が、美都の夫のことをいい人だと決めつける香子に対し「あんたのいい人は、他の人のいい人じゃない」と言うように、一面的でしかない。一概にいい人、優しい人、正しい人でいたい私たちは、かといって本能が求めるままに行動したいという欲望も心のどこかに隠し持っている。このドラマはある意味、「人間らしい」ドラマだ。

 占いが導く運命にすがり、その言葉に従うことで幸せを手に入れようとした美都は、職場の同僚から、占い師の「運命はどうなるかじゃなくてどうするか」という言葉を聞いて、ようやく運命は探すものではなく、自分で選ぶものだということに気づく。8話で「私の運命どうしよっかな」と呟いた彼女は、9話で、自分が無自覚に選んできたものと選ばなかったもの、その責任の大きさに恐れおののく。それでも彼女は次に何を選ぶのだろうか。今度こそちゃんと自分の進むべき運命を選ぶことができるのだろうか。そしてそれは彼女の心に嘘をつかない、打算でも諦めでもない、何かなのだろうか。彼らの行く先に目が離せない。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』
毎週火曜22:00〜22:54放送
出演:波瑠、東出昌大、仲里依紗、鈴木伸之、大政絢、中川翔子、黒川智花、成田偉心、山崎育三郎、橋本じゅん、麻生祐未
原作:いくえみ綾『あなたのことはそれほど』(祥伝社『FEEL YOUNG』連載中)
脚本:吉澤智子
プロデューサー:佐藤敦司
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/anasore/

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