亀梨和也主演『ボク、運命の人です。』最終話に寄せてーー運命のプロポーズは成功したか?

 ついに最終回を迎えた日本テレビ系土曜ドラマ『ボク、運命の人です。』。本作から放送枠が22時に移り、視聴率は初回の12%からひと桁台に落ちはしたものの、安定して推移し続け、9話までで平均9.54%。近年低迷気味であったこの土曜ドラマ枠のテコ入れとしては充分な成績といえるのではないだろうか。

 さて、先週の第9話で山下智久演じる自称“神様”が、30年後から来た息子の一郎であると知った亀梨和也演じる誠。まだ晴子(木村文乃)へのプロポーズという大一番が残っていながら、一郎は未来に帰り、自分との記憶まで消していったのだ。そうなれば、最終回に期待したことは二点。誠が自分の力で晴子にプロポーズをして成功すること。そして、一郎が再び誠の前に姿を現すことである。

 「神に頼るとは何たること。自らの力で自らを助けたまえ」。最終話は交響曲第五番「運命」を作曲したベートーベンの名言から始まり、誠に訪れる不運を助長させる。元々“女運”が悪かった誠は、一郎との記憶を失ってから晴子との運命が徐々に崩れ始めていく。通りがかった子供から預かった風船を飛ばしてしまい、ずっと晴子と背中越しだった職場の座席は変わり、婚約指輪を買った店が臨時休業。さらに晴子は大阪に出張に行ってしまい、会いに行こうとしたら台風で飛行機が欠航。しかし、一郎がいなくなるときに、記憶を消すための注射は「都合の悪いこと」しか消えないと語っていた。つまりは、彼がこれまで積み上げてきた運命へのアプローチは消えないということでもある。もう第1話のときのように運命の存在に気が付かない男ではなくなったおかげで、彼は自分の力で運命の歯車が狂い始めた原因を見つけ出すのだ。

 そこからとんとん拍子に進んでいくポジティブな展開は、これまで誠が一郎の力を借りて経験してきたことを、一人で反復することで成立していく。会社のボーナスの焼肉と、突然の雨が降り出した第2話。そして楽団の演奏会で『運命』と『アフリカン・シンフォニー』を晴子と同じ空間で聴く第1話。しかも、この雨に濡れたまま誠が演奏会に向かうことで、クライマックスの相合傘が自然なものとなって、誠が“すでに虹をくぐっている”ことを思い出させてくれるなど、相変わらずこれまで積み上げてきた伏線を一気に回収していくのだ。

 劇中で何度も演奏されてきた『アフリカン・シンフォニー』。ヴァン・マッコイ作曲の同曲 は、元々はディスコミュージックで、のちに吹奏楽で演奏されるようになり、高校野球の定番応援曲となった。第1話の高校野球の地区大会での邂逅と、会場の両端で同時にしたスタンディングオベーションなど、二人の運命を後押しするような応援歌との見方もできるが、この曲が収録されたアルバムのタイトルは「Love is the Answer」(=愛こそ答え)。もうすでにこの曲によって導かれる二人の運命は、確約されていたとみて間違いないだろう。

 さらに、第3話でドビュッシーの『月の光』を演奏していた少女が、30年後に地球が救われたときの記念式典で演奏すると以前一郎が誠に教えた場面がある。それが今回の運命の歯車が狂い始めた原因となった少女であり、その少女に再び風船を渡すことですべてが良き方向に向かっていく。強引ながらも未来につながるという点では、最終回に相応しい伏線だったのだ。

 無事に誠がプロポーズを自力で成し遂げたことで、正真正銘のハッピーエンドを迎えたわけだが、結局この最終話で誠と一郎が再会することがなかったのが心残りである。しかもまだまだ回収しきれていない伏線も残っているし、何より30年後の未来がどうなったのか、はっきりしていない。

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