デレク・シアンフランス監督『光をくれた人』インタビュー

『ブルーバレンタイン』から『光をくれた人』へーー シアンフランス監督が語る「映画で夫婦を描き続ける理由」

「『光をくれた人』は、極端なことを言うと妻のために作った作品」

——『ブルーバレンタイン』の夫婦と『光をくれた人』の夫婦の違い、そして共通点はどこにあるとお考えですか?

シアンフランス:表面的には全然違うように見えるよね。

——そうですね。

シアンフランス:『光をくれた人』のトム(マイケル・ファスベンダー)とイザベル(アリシア・ヴィキャンデル)は、『ブルーバレンタイン』のディーン(ライアン・ゴズリング)とシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)とまったく違うカップルだけど、あえて比較するなら、ディーンはイザベルと似ていて、シンディはトムに似ているかもしれない。ディーンとシンディも、トムとイザベルも、塩とコショウのような関係で、相手がいるからこそ引き立つんだ。ある時点まではね(笑)。

 

——ある意味で、夫婦の「現実」と「理想」の違いのようにも見えますが。

シアンフランス:今回の『光をくれた人』は、極端なことを言うと妻のために作った作品なんだ。誰かを狂おしいほどに好きになって一緒になっても、僕らは子供が生まれると育児にすべての時間と労力と愛情を注ぐようになる。そして子供が成長して家を出ていった瞬間、お互いについて何もわかっていないことに気づく。そういうことってすごく多いと思うんだ。自分の両親がそうだったようにね。たまに妻とディナーに出かけたりすると、年配のカップルが会話もなく食事をしているのをよく見かける。彼らは、それまで子育てという共通のテーマについてばかり話してきたから、子供が独立してしまってから話題がなくなっているんだ。それって、とても哀しいことだよね。だから、僕は今回の『光をくれた人』で、夫婦間の愛情は子供の存在を乗り越えられるかどうかを追究したかった。今でもよく考えるんだ。僕という「ストレスのもと」がなければ、自分の両親は離婚せずに済んだのだろうかって。それでも、僕は今の妻と死ぬまで一緒にいたいと思っている。『光をくれた人』を撮ることで、僕は妻に『いつまでも一緒にいてほしい』というメッセージを届けたかったんだ。

——せっかくの機会なので、実人生からの影響だけでなく、あなたの作品に影響を及ぼした映画作家についても教えてもらえますか?

シアンフランス:コロラド州で過ごしていた10代の頃、自分の部屋のベッドの上に貼っていたのは、常にマーティン・スコセッシの作品のポスターだった。同級生の友だちは、みんなランボルギーニに乗っているビキニ姿の女の子のポスターを眺めていたけど、僕はスコセッシの作品のポスターを眺めていたんだ。だから、幼い頃からずっと敬愛している映画作家といえばスコセッシだね。彼から映画を学んで、そこからいろんな方向へと興味が広がっていった。彼を通してジョン・カサヴェテスを知り、カサヴェテスを通してエレイン・メイを知って、エレイン・メイからマイク・ニコルズを知った。そうやって延々と続いていった感じだね。まだ1980年代だったからVHSテープをひたすら見ていたんだ。昔から本を読むのが苦手だったから、あまり小説とかは読まずに、映画ばかり繰り返し観て研究していた。映画だったらいつまでも観ていられるよ。だから、影響を受けた監督を挙げていったらきりがないな。でも、同時代の監督ですぐに頭に思い浮かぶのは北野武だ。特に『HANA-BI』は僕の人生を変えた一本だった。

 

——今回の『光をくれた人』は、あなたにとって初めての小説の映画化作品ですが、本を読むのは苦手なんですね。

シアンフランス:大好きな作家もたくさんいるよ。でも、脳の構造が原因なのか、僕は本を読むのにすごく時間がかかるんだ。映画監督になった理由の一つもそこにあると思う。6歳の頃から映像を撮っていたんだけど、もし本を読むのが好きだったら小説を書いていたかもしれない。自分が他人とコミュニケーションを取るには、文字よりも映像の方がいいって早くから気づいた。自分にとって映像表現は、自分の経験を伝えて、世の中を理解するための唯一の手段だったんだ。

——『光をくれた人』は初の原作ものであるだけでなく、舞台はオーストラリアの孤島、時代背景は20世紀の初期と、これまで現代のアメリカが舞台設定の作品ばかり作ってきたあなたにとって数々のチャレンジが刻まれた作品になっています。そこには、自身の作風を広げてみたいという思いがあったのでしょうか?

シアンフランス:その通り。映画監督、そしてアーティストとして、同じことを繰り返したくはないという思いが強くある。アーティストの最も大切な役割は、人々がこれまでに見たことないようなイメージを創り出すことだからね。「自分は同じことを繰り返していないか?」ということを、いつも自問自答してなきゃいけないと思っている。それと、僕はジョン・カサヴェテスやエレイン・メイやマイク・ニコルズの作品に傾倒しながら、昔からハリウッドの古典的なメロドラマにもずっと特別な感情を抱いてきたんだ。ダグラス・サーク、マイケル・パウエル、デヴィッド・リーンらの作品からは、カサヴェテスの作品とはまた違った点で、とても大きな影響を受けていると思う。今回の原作を初めて読んだ時、リアリストの僕がどうやってこの壮大なストーリーを描くべきか正直迷ったし、作品の時代設定が現代から離れるのも心配だった。「1920年代のニュージーランドやオーストラリアについて、僕が一体何を知っていると言うんだ?」と。でも、しばらくして、この物語はどこでも成立するものだってことに気づいたんだ。エデンの園のような原始的な場所に暮らす夫婦としてね。だから、その方向に向かって自信をもって踏み出すことができた。

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