伊藤淳史の魅力は“お人好しキャラ”だけではない 『ねこあつめの家』受けの演技を考察
これまでの伊藤が出演した作品を観ていると、同じような特徴を感じることが多い。大ヒットし、自身も日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した『映画 ビリギャル』でも、有村架純演じる工藤さやかの塾講師として伊藤は出演しているが、この作品でも、有村が紆余曲折するさやかの姿を感情表現豊かに演じているなか、隙を見せつつも“絶妙な大きさの器”で受け止め、さやかというキャラクターを非常に魅力的に映し出す役割を担っている。
また、伊藤が『チーム・バチスタ』シリーズ(フジテレビ系)や、TBSとWOWOW共同制作『MOZU』シリーズなど、仲村トオルや西島秀俊といった主役然とした俳優の相棒役(『チーム・バチスタ』シリーズは伊藤が主演だが)としてしっくりくるのも、彼によって作り出された隙のあるキャラクターが、受けに回ることによって、「この人はこういう性格だ」ということを直接的に伝えるのではなく、自然と観ている人に染み込ませることができるからだろう。
個性の強い俳優と組んでも、スポンジのように吸収し物語に深みを与え、自身が主役となっても、周囲を魅力的に輝かせ、その光に自身も照らされジンワリと人の心に染み込んでいく……。こうしたどちらもこなせる俳優というのは、なかなかいないのではないだろうか。
■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。
■公開情報
『ねこあつめの家』
2017年4月8日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開
出演:伊藤淳史、忽那汐里
監督:蔵方政俊
製作総指揮:吉田尚剛
企画・脚本:永森裕二
原案:ねこあつめ(Hit-Point)
企画・配給:AMGエンタテインメント
(c)2017 Hit-Point/『映画ねこあつめ』製作委員会
公式サイト:nekoatsume-movie.com