視聴者を限定しない優れた人間描写が光る

　『Looking／ルッキング』は視聴者を限定するものではないということも付け加えておきたい。人が生きていく中で必ず直面する壁や岐路。悩みや疑問。それらに翻弄されながら、それでもなんとか乗り越え、対処していこうとする登場人物の姿は、どのような受け手であっても共感を覚え、画面の中の彼らを自ずと応援したい気持ちに駆られるはず。映画以上に尺の長いTVドラマは、そうした機微を少しずつ、丹念に醸成していくのに最適の土壌と言えるだろう。

　そして、2015年の賞レースで『さざなみ』が大きな注目を集めたアンドリュー・ヘイが参加していることも高評価の一因だ。彼の演出は観る者を決して力ませることがない。柔らかな語り口を用いて観る者を作品に引き込み、出演者の狭間で刻々と変化していく空気を落ち着いたタッチで織りなしていく。それが結婚45周年を迎えた夫婦の物語（さざなみ）であっても、今回の3人のゲイの愛と友情の物語であっても、卓越した視点と描写力は相変わらず健在だ。

　もちろん、3人のメイン俳優の素晴らしさは言うまでもないし、彼らがベイエリアを始めとするリアルなロケーション、店舗、公共機関、そして開かれた空気の中でストーリーを展開させていくのも大きな見どころと言えよう。

　クリスマスから年末年始にかけ、言い知れぬ温もりが胸いっぱいに広がるこのひととき。TVドラマ界に一石を投じた『Looking／ルッキング』の“愛と友情のかたち”に触れ、彼らのたどる道程をじっくりと見つめてみるのはいかがだろうか。

■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。Twitter

■配信情報
Huluプレミア『Looking／ルッキング』シーズン1（全8話）
12月23日（金）から独占配信スタート、以降毎週金曜日に1話ずつ追加配信予定
監督・製作総指揮：アンドリュー・ヘイ
出演：ジョナサン・グロフ、フランキー・J・アルバレス、マレー・バートレットほか
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