古川雄輝は“異世界”で輝く俳優だ! 『L-エル-』広瀬アリスに負けない熱演を考察

 日常を舞台に、等身大を売りにする若手俳優は多くいる。そのなかにあって、古川は異世界でこそ煌めく。『L-エル-』は、まさに持ち味に見合った作品だ。しかし、波瀾万丈な人生を歩むヒロインのエルとは対照的に、オヴェスは故郷のラ・ヴィ・アン・ローズから一歩も外へと出ることもなく、その一生を静かに終える役。要所、要所でオヴェスの“いま”が差し込まれていくものの、そこに特別な出来事が描かれるわけではない。難しいキャラクターだ。

 

 古川はオヴェスをそつがなくこなしていく。しかしそれだけでは物足りない。そんな少しばかりの消化不良を抱えていたところ、最後にガツンとやられるのである。広瀬のエルだけでなく、オヴェス役の古川も老人姿で登場する。ここに来て、オヴェスの、古川の胸懐が爆発。ベッドに横たわりながら、絞り出されるひと言、ひと言に、想いを吐き出す胸の動きに、オヴェスの人生が垣間見えてくる。作品は、エルを想いつづけたオヴェスの物語へと昇華する。

 演劇的な空間やSF要素の強い設定など、特殊な舞台でこそ、異彩を放つ古川。幻想的な世界観が貫く『L -エル-』では、年齢を超えた老人役を、説得力を持って演じてみせた。決してまだ演技力が高いとは言えないが、ポテンシャルは確かにある。今後、その性質を引き上げていけるか楽しみだ。リアルの外をリアルに生きられる役者として。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■映画情報
『L-エル-』
公開中
出演:広瀬アリス、古川雄輝、高橋メアリージュン、平岡祐太、前川泰之、成田凌、弥尋、Mikako(FAKY)、古畑星夏、田中要次、高橋ひとみ
原作:Acid Black Cherry 4th ALBUM「L-エル-」より
脚本:下山天・阿久津朋子
監督:下山天
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝映像事業部
(c)2016映画「L-エル-」製作委員会
公式サイト:http://acidblackcherry-movie-l.net/

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