『代償』高梨臨インタビュー

高梨臨、Huluドラマ『代償』のハードな撮影現場で得たもの「演技は役を愛するところから始める」

 幼少期、悪魔のような友人に、人生を崩壊させられた青年、圭輔。いまは弁護士として再出発していた彼の許に、ある強盗殺人事件の容疑者から、弁護依頼が届く。その男、達也こそ圭輔の因縁の相手だった……。圭輔はこれまで目を背けていた忌まわしい過去に決着をつけるため、真っ向から闘うことを決意する! Huluが贈る衝撃のサスペンス『代償』。高梨臨は、圭輔が働く弁護士事務所の同僚であり、事務所社長の娘、真琴を演じている。真琴は、小栗旬扮する圭輔と婚約中で、事の真相も知らないまま、巻き込まれていく。(相田冬二)

「Huluは可能性のあるコンテンツ」

高梨臨

「最初、台本をいただいたとき、もう読み止められない、という感じで進んでいきました。こういう作品に参加できるんだ、とワクワクしながらでしたね。(キャラクターの)心情的にも、いろいろ激しい部分もありましたが、私自身、撮影中ずっとワクワクしていました」

 高梨は、ノンストップで繰り広げられる驚愕の物語をそう表現する。そもそも、彼女はHuluと馴染みがあった。

「私はもともとHuluの会員だったので(番組も)観ていて。そこでドラマをやるとなったときに、そうか、Huluだったら、こんなことできるんだ、って。地上波ではなかなか難しいような表現もできるし、(地上波のドラマのように、放映される)時間もピッタリ決まっているわけではないし。すごく表現が自由だなと。『代償』は、Huluのような可能性のあるコンテンツでやったら、すごく楽しく濃厚なものができるんじゃないかなと思って、現場に入りました」

 高梨演じる真琴は、いわゆるお嬢様だが、逆境でこそ浮き彫りになる強さがある。

「強いですね。特に正義感が強い。責任感もあって。私からしたら、最初はちょっとお節介だなって思うくらいのキャラクターだったんですけど。でも、内容もハードですし、そのぐらいの(強い)気持ちがあったほうがいいのかなって。強く、強く、いきました」

圭輔が激しく揺れ動くだけに、真琴のブレのなさが、ある意味、作品の芯になる。

「(真琴の)気持ちを整理するために、結構メモしてました。(状況による感情の変化が)だんだんわからなくなるので。自分の中での計算や調整が必要な役でしたね。惑わされたり、不安になったり」

 絶妙なバランス感覚が求められる役。撮影終了時は、独特の感慨があったという。

「撮ってるときは、とにかく必死で、(シーンやカットを)一個一個というだけの気持ちだったんですけど。でも(撮影が)終わってから、わー、抜けていく……という感覚があったんです。この世界観にはどっぷり浸かっていたのかな」終わってから、わかることがある。

作品の余韻は、毎回「全然違う」と語る。

「今回は、ふっと抜けていく……というか。どこか安心する感じがあったかもしれません。解放される……感覚もあったかも。心情的にもハードな撮影をずっとやっていたし、常に肩に力が入っているというときもあったので。ああ……(やっと、終わった)という安心感はありましたね。現場は楽しかったので、(終わった)さみしさはもちろんあるんですけど、ホッとはしました。自分のなかで、やりきった感はあります」

「どんな作品でも、まず、自分の役を信じて、愛する」

『代償』場面写真

 ヘヴィな作品。やりきるために「意志を強く持つこと」を意識していたという。

「どういうふうになっていくのか……(圭輔のことを)信じたい気持ちもあるし、だんだん偏ったりも、崩れたりもする。そして、また戻ったりもする……そこは難しかったですね。あれだけ不安定なところを(恋人に)見せられちゃうと、私だったら、『え……』ってなっちゃいます(笑)。でも真琴には強さがあるし、すごく自立してる女性だとも思うので、そこは真琴なら、というつもりでやりました。自分の意志というよりも。私だったら……無理ですね。支える力はないです(笑)」

 自分の意志ではなく、役の意志を大切にする。潔くそう断言する高梨には、演じ手として揺らがぬ芯が見え隠れする。

「どんな作品でも、まず、自分の役を信じて、愛する。それは決めています。嫌いになっちゃうと、イヤになっちゃうので。真琴に関しても、自分とは違うタイプだとは思うんですけど、すごく真っ直ぐ。わーっと突き進んでしまうときは、なんでそうなっちゃうんだろう、と思いながらも、でも、その真琴を信じてあげようという気持ちがあって。それが(結果的に)強く見えたらいいなって」

役を信じること。それが高梨臨の強さだ。

「たとえ嫌われ役でも、愛してあげられれば。どんなに悪いヤツでも、自分だけは好きでいてあげようと思いますね。自分のことが嫌いで嫌いでしょうがないという役なら、また違ったりもするんでしょうけど。(演じる)人それぞれだとは思うんですけどね。私は、その役を愛するところから始めます。もちろん、まず、その子を理解する必要はありますね。でも理解さえすれば、その子の好きな部分は見つかります」

 では、演じることの醍醐味はどこにあるのだろう。

「実際、役に入って演じてみると、なんだかんだとその役に自分が影響されている部分があるんです。台本を読み、その人の気持ちになって考えてる時間が多いからでしょうね。そうすると、自分の普段のことも、その役の人の思考回路で考えるときが結構あって。そうすると、新しい感情に出逢えて、ああ、楽しいなって。こんなに、この人に影響されてたんだ、って気づいたりする。それはやっていて面白いですね」

つまり、影響されるほど、役に付き合っているということだ。

「その人の気持ちでセリフをしゃべるということは、その人に影響されるということだと思うんです。ただ、私は(役を)引き摺りすぎると、ダメなタイプだと思うので。なるべく、(撮影が)終わったら、よし! と切り替えようとします。私はそこまで集中力がもたないというか。ずーっと(役のままで)いすぎても、うまくいかないなと感じることがあったんです。家に帰ったら切り替えるようにはしています。だからこそ、現場ではその世界にどっぷり浸かろうと思います。ま、それで倒れてもしょうがないと(笑)。でもリセットするときはしますね」

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