自分を繕って就活することに意味はある? 『何者』が示す、日本社会の奇妙な縮図

 今考えてみるとあの頃、周りの友人たちもこの映画の若者たちと同じようにそれぞれの事情を抱え、もがき苦しみながら焦りや精神的重圧の中で闘い、何も分からない中で必死に大人になろうとしていたのだと思う。その中で自身のアイデンティティに気付けていたのだろうか。それとも気付けないまま、社会の渦に飲まれて行ったのか。

 

 演劇サークルで脚本を書き、冷静で分析が得意な拓人(佐藤健)、家庭の事情を抱える、地道で素直な瑞月(有村架純)、大学ではバンド活動をする、天真爛漫な光太郎(菅田将暉)、意識は高いが、なかなか結果を出せない理香(二階堂ふみ)、理想ばかりの空想クリエーター、隆良(岡田将生)。

 自分の本音をきちんと相手にぶつけられる者、それができずに内に秘める者。劇中たった140字のツイッターをはけ口に、自分頑張ってるアピールを繰り返し、偽名で本音を語ることでやっと自分を支えている。“就活とは何だ?”それぞれのキャラクターが持つ個性が、俯瞰して見た現代日本社会の縮図のように思えた。

 

■大塚 シノブ
5年間中国在住の経験を持ち、中国の名門大学「中央戯劇学院」では舞台監督・演技も学ぶ。以来、中国・香港・シンガポール・日本各国で女優・モデルとして活動。日本人初として、中国ファッション誌表紙、香港化粧品キャラクター、シンガポールドラマ主演で抜擢。現在は芸能の他、アジア関連の活動なども行い、枠にとらわれない活動を目指す。
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■公開情報
『何者』
全国公開中
原作:朝井リョウ(『何者』新潮文庫刊)
監督・脚本:三浦大輔
音楽:中田ヤスタカ 主題歌:「NANIMONO(feat.米津玄師)」中田ヤスタカ(ワーナーミュージック・ジャパン)
企画・プロデュース:川村元気
出演:佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之
(c)2016映画「何者」製作委員会 (c)2012 朝井リョウ/新潮社
公式サイト:http://nanimono-movie.com/

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