『拝啓、民泊様。』中野裕太インタビュー
『拝啓、民泊様。』中野裕太が明かす、タレント業をやめた理由「退路を断って、役者一本に絞る」
新井浩文、黒木メイサW主演ドラマ『拝啓、民泊様。』が、本日10月23日から放送される。本作は、2020年の東京オリンピック開催に向けて、昨今よく話題に上がる“民泊問題”を題材としたヒューマンドラマ。突然リストラを言い渡された主人公・山下寛太(新井浩文)は、リストラされたことを妻の沙織(黒木メイサ)に言い出せないまま民泊ビジネスを始めるのだが、不満を爆発させる宿泊客や無理な仕事を押し付ける企業、さらには地域住民との様々なトラブルに巻き込まれていくことに・・・・・・。民泊がはじめて認可された大田区の全面協力のもと、民泊ビジネスのリアルやHow to要素も交えつつ、“人と人との繋がりの大切さ”や“家族愛”が描かれていく。リアルサウンド映画部では、沙織の兄で、寛太の良き相談相手でもある江南昌平役の中野裕太にインタビュー。共演者との印象深いエピソードや、近年の俳優活動について語ってもらった。
「“民泊”をキッカケに展開される人間ドラマ」
ーー本作は、ハートフルドラマである一方、東京オリンピックに向けて話題になっている“民泊問題”を取り上げた社会派ドラマという側面もあります。
中野裕太(以下、中野):僕みたいにあまり民泊に詳しくない人が、民泊の仕組みを知ることができる要素もあると思いますが、それ以上に夫婦愛や家族愛などの人間模様が、しっかりと描かれています。社会派ドラマでもありますが、“民泊”をキッカケに展開される、味わい深くほっこりとしたヒューマンドラマという印象を受けました。
ーー民泊をテーマにしたドラマって珍しいですよね。
中野:本当に珍しいみたいですよ。民泊をテーマにしたドラマや映画などの映像作品は、世界初だと監督が言っていました(笑)。僕もあまり聞いたことはなかったのですが、比較的安価なので、宿泊する際の選択肢の一つしてして魅力的だなって。
ーー海外で民泊は結構多いらしいですが。
中野:記憶が定かではないのですが、僕がイタリアに留学していたのがちょうど10年くらい前なんですけど、そのときは耳にしたことも、泊まったこともなかったです。“Airbnb”(宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイト)を知ったのも、わりと最近ですね。
ーー中野さんが演じる昌平も、イギリスに留学経験のあるキャラクターですよね。自身と近い部分もあったのでは?
中野:昌平は、黒木メイサさんが演じる沙織の兄という役柄なのですが、僕にも妹がいるのでそこも一緒ですね。実際、沙織への接し方や会話のやり取りなどが、実の妹との関係性に似ているな、と思う事もありました。昌平には共感できる部分も多かったので、役には入りやすかったですね。でも、共感できない部分ももちろんあって、昌平は僕のようでいて僕ではない、不思議な感覚を抱きました。昌平は、優しくて良いやつなんだけど、自然に面倒事に巻き込まれていくタイプです。飄々とした性格をしているのですが、ドラマが進むにつれて、彼なりの悩みやバックグラウンドが徐々に明かされていくので、そこは注目していただきたいですね。
ーー中野さんは、留学の経験がお芝居に活かされていると感じることはありますか?
中野:言ってしまえば、どんな経験でも役者として活かすことができます。もしかしたら、自分自身じゃ気付かないところで、留学の経験が僕の独自性になっているのかもしれない。すごい身近なところで言うと、語学は役に立っていると思います。これから色々な国の作品にトライしようと思っているのですが、英語やイタリア語などを話せることによって、役者としての選択の幅が広がっていると感じます。
ーー黒木メイサさんとの共演はいかがでしたか。
中野:黒木さんは、何事にもサバサバしていて潔い、素敵な方でした。撮影の合間に銭湯の脇でよく世間話をしていたのですが、そういうアットホームな感じがこのドラマらしくていいな、と。黒木さんが妹感を出してくれたおかげだとは思いますが、初めての撮影シーンから自分の妹のように感じることができたため、兄妹という関係がスムーズに出来上がったと思います。
ーー沙織の結婚相手である寛太役の新井浩文さんとの共演については?
中野:新井さんは、いつも自然体で真っ直ぐな方だと感じました。自分の趣味に誠実なところなどは、寛太と似ている部分だと思います。それに、大変気さくな方で、撮影現場でも新井さんからよく話しかけてくれました。劇中では、寛太と昌平の2人で話すパートが多いのですが、ディープな会話を繰り広げるシーンは印象深く残っています。昌平と寛太の関係を、細かく打ち合わせするのではなく、演技を重ねる中でリアルな空気感を作り上げていきました。
ーー自然な演技を意識したのですね。
中野:僕は、芝居はリアクションが大事だと考えています。アクションにばかり気を取られていると、登場人物の関係性や物語の背景が見えにくくなってしまうと思うので、現場ではとにかく自然体でいることを心がけていますね。フラットな姿勢で多くのことを吸収し、その都度リアクションするようにしています。もちろん、演じる上で葛藤や悩みは常に存在します。本作でも、役者としてのスタンスを一旦切り替えて、新たな挑戦をしてみようと試行錯誤していました。共演者の方からも、これまで経験したことのない面白い刺激をたくさん受けることができたので、充実した有意義な撮影になっています。