『べっぴんさん』怒涛のスピード展開は吉と出るか? 芳根京子ら若手女優の好演に期待
とはいえ、芳根京子、百田夏菜子、土村芳の三人はそれぞれ好演している。芳根は、昨年『表参道高校合唱部!』(TBS系)で主演を果たして以降、女優としての力量はすでに折り紙つき。内気だが好きなことに没頭する芯が強いヒロインを真正面から演じている。
土村芳はテレビドラマの出演が少なく大きな役は今回がはじめてだが、その無名性がいい方向で生きている。近年、朝ドラ出演を期にブレイクする若手実力派女優は多いが、土村もその一人となるのではないかと思う。
逆に百田夏菜子は、アイドルグループ・ももいろクローバーZのリーダーとして知名度はすでに確立されていたのだが、アイドルとしての明るく快活なイメージがそのまま持ち込まれるというよりは、ヒロインの友達という立場を、きっちりと演じていている。昨年公開された映画『幕が上がる』の演技指導のために演出家・平田オリザのワークショップに参加した経験が大きかったのだろう。アイドル的なキャラクター芝居とは違う、作品世界に溶け込んだ落ち着いた芝居となっていて、脇役として実に良い仕事をしている。
他にも、坂東家の女中の娘・小野明美を演じる谷村美月や、すみれの姉・坂東ゆりを演じる蓮佛美沙子といった主演級の女優が脇を固めており、女優陣に関してはまったく問題がない。
朝ドラには、学生時代や母親になる過程を丁寧に見せることでヒロインの成長していく姿を新人女優の成長する姿を重ねて楽しむ面白さがある。ヒロインの成長が一番わかるおいしい場面を短縮したことが、今後、吉と出るか凶と出るか。それも含めて見守っていきたいとい思う導入部だった。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■番組情報
出演:芳根京子、生瀬勝久、菅野美穂、蓮佛美沙子ほか
作:渡辺千穂
音楽:世武裕子
平成28年4月4日(月)~10月1日(土)全156回(予定)
<総合>
(月~土)午前8時~8時15分/午後0時45分~1時[再]
<BSプレミアム>
(月~土)午前7時30分~7時45分/午後11時~11時15分[再]
(土) 午前9時30分~11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「べっぴんさん一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時~11時20分
「5分で『べっぴんさん』」
<総合>
(土)午後2時50分~2時55分
(日)午前5時45分~5時50分/午後5時55分~6時
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/beppinsan/