脚本家・演出家/登米裕一の日常的演技論
竹内涼真は理想の“ヒロイン男子”だった? 若手演出家が読み解く『青空エール』
竹内涼真君は、努力を惜しまないけれど、葛藤も抱えた、男女問わずに応援したくなるタイプの“普通さ”を持ったヒロイン男子でした。物語の中で、大介が甲子園出場チャンスを逃してしまう際に、つばさは1人でトランペットを吹きます。つばさは時に、ヒーロー役になるんです。だからこそ、大介もよりヒロインとしての魅力を増し、つい共感してしまうのではないでしょうか。
日常生活において、少女漫画に出てくるようなヒーロー男子はなかなか見かけません。ハイスペックな天才型であり、尚且つ他人が影で頑張っている姿にそっと気付いてあげられる存在というのは、現実にはあまりいないタイプでしょう。もちろん、だからこそ少女漫画では需要があり、描かれ続けているのですが。
だけどヒロイン男子は、そもそもどこにでもいそうな普通の人なので、日常生活の中でも見かけるタイプです。竹内涼真君の芝居には、この“どこにでもいそう”な感じがしっかりとありました。もともと持っている資質なのかもしれませんが、役に対する準備をきちんとしていたのだと思います。きっと、日常においても努力を惜しまない人なのでしょう。ヒロインを演じるうえで、理想的な俳優さんだと思います。
■登米裕一
脚本家・演出家。映画『くちびるに歌を』CX『おわらないものがたり』NHK『謎解きLIVEシリーズ』などの脚本を担当。大学時代に旗揚げをした劇団『キリンバズウカ』の主宰も務める。個性豊かな登場人物たちによる軽快な会話の応酬を持ち味としており、若手作家の躍進著しい演劇界の中でも、大きな注目を集める。また演技指導家としても評価を得ており、現在多くのワークショップ依頼を受けている。
■公開情報
『青空エール』
全国東宝系にて公開中
監督:三木孝浩
脚本:持地佑季子
原作:河原和音「青空エール」(集英社マーガレットコミックス刊)
出演:土屋太鳳、竹内涼真、葉山奨之、堀井新太、小島藤子、松井愛莉、平祐奈、山田裕貴、志田未来、上野樹里
(c)2016映画「青空エール」製作委員会
(c)河原和音/集英社
公式サイト:aozorayell-movie.jp