『とと姉ちゃん』雑誌作りエピソードに見る、NHKの強さ 花山の頑なな姿勢が意味するもの

 そして第17週では、逆に広告を入れることを頑なに拒む花山に対して、雑誌存続を第一と考える常子が敵となってしまう。花山がスポンサーを拒むのは内務省で戦意高揚のスローガンを作る仕事に携わっていた時の苦い記憶があるからだろう。国の仕事でなくとも、企業やスポンサーといった巨大な組織が、個人の自由をじわじわと奪っていくことに対して自覚的なのだ。
 
 それにしても広告を頑なに拒む花山の姿は、国民の受信料で成り立っているNHKだからこそ放送できたものだろう。スポンサーのCMで成り立っている民放では、花山の方針自体がクレームの対象になりかねない。スポンサーに配慮しなくていいNHKの強さが如実に現れたエピソードだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『とと姉ちゃん』
平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定)
【NHK総合】(月〜土)午前8時〜8時15分
[再]午後0時45分〜1時ほか
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/totone-chan/

関連記事