遠藤憲一、仲村トオル、渡部篤郎……夏ドラマに見る“理想の上司”像の変化

 今クールの夏ドラマは、キャリアウーマンや新入社員が活躍する“仕事ドラマ”が多い。仕事ドラマでは、血気盛んな主人公たちを支え、教育し、正しい方向へ導く、様々なタイプの上司役もまた注目すべきポイントだろう。夏ドラマを代表する上司役をピックアップし、いま求められる理想の上司像を探ってみたい。

情熱的、穏健、冷静沈着、様々なタイプの上司が登場

 まずは、『HOPE~期待ゼロの新入社員~』での営業部の課長、織田勇仁(遠藤憲一)。原作が作られた韓国では「サラリーマンのバイブル」とも称されたほどの大人気であったこのドラマは、幼い頃から夢見ていた囲碁のプロ棋士を挫折した一ノ瀬歩(中島裕翔)が、総合商社の採用試験を受けるためにインターンとして働き始め、高卒の彼が仕事を通して成長をしていく姿を描いた物語。その歩の上司となるのが織田だ。最初は何もできない歩に対して戦力外通告をするなど冷たい態度で接するが、彼のひたむきな努力を徐々に認めていく。また自らの営業では、何を言われても怒らずに笑って頭を下げる、いわば“プライドを捨てるプライド”を持つ営業の鏡のような男で、昔ながらの叩き上げタイプだ。こうした上司は、若者から見ると最初は煙たい存在なのかもしれないが、学ぶところは多いだろう。いまこそ、彼のような人情派の上司が求められているのかもしれない。このドラマでは、主人公がそうした上司の背中を見て成長して行く姿に、若い世代が共感しているのも興味深いところだ。また、かつては怖い役ばかりだった遠藤が、『民王』や『お義父さんと呼ばせて』などですっかり人情派の上司が似合う俳優となっているのも見どころ。中島裕翔をはじめ、桐山照史や山本美月といった若手俳優が多い中、安心して見ていられる演技力もまた、上司の風格に似つかわしい。

 逆に、いまどきの上司像というと、『家売るオンナ』でのテーコー不動産の営業課課長、屋代大(仲村トオル)が思い浮かぶ。「私に売れない家はない!」がキャッチフレーズのスーパー営業ウーマン三軒屋万智(北川景子)は、ダメな後輩にはとことん厳しく、売った手柄は全て自分のものにしてしまう。コンプライアンスと組織の結束を大事にする穏健派の屋代は、そんな彼女に対して手を焼き、毎夜スナックに行っては愚痴るちょっと情けないバツイチ上司だ。万智が強烈なぶん、甘さが目立つが、実際にこういった穏健な上司だと部下たちは気持ちよく仕事ができるのではないか。また、新人をちょっとでも怒ると無言で辞めて行くことが多いともいわれる昨今、中堅管理職の立場の者がこうした態度を取るのは理解できるところだ。また、働き過ぎて家族を顧みない生活をしたためにバツイチになってしまったという過去を持つため、本来は仕事に対してかなり情熱的なタイプだったことも伺える。今後の展開では、秘めていた熱血ぶりを発揮することもあるのかもしれない。かっこいいベテラン俳優となった仲村トオルではあるが、『あぶない刑事』を知っている人にとっては、先輩刑事のタカとユージに振り回される若手刑事のトオル役の印象が強く、後に劇場版では課長に昇進するも相変らず2人に振り回されるというダメ上司を演じていたが、このドラマでも振り回されっぷりが実に良い味を出している。世間ではかわいいといった評価もあり、やはりある意味での理想の上司像を体現しているといえるのではないか。

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