姫乃たまのウワサの濡れ場評008『エクス・マキナ』

人間は“AI”に恋心を抱くのかーー地下アイドル・姫乃たまが『エクス・マキナ』を観る

 私は、「何もしていないのにパソコンが勝手に壊れた!」と思うタイプです。もちろんパソコンは私が何かをしてしまった(あるいはしなかった)から壊れていると思うですが、機械音痴の私にはわかりません。おかげで私は機械が怖いのです。

 通販サイトは買い物をしていなくても私に合った商品を勧めてきますし、車のナビは知らない誰かに私の現在地と行く先を教えている気がします。パソコンに内蔵されたカメラはギョロっとこちらを向きそうですし、街のどこにいても監視カメラが私の姿を捉えていますし、たいして仲の良くない人間との会話は録音されている気がするのです。

 つまり私は、すべての行動は機械を介して、機械にものすごく詳しい人に情報を抜き取られて、好きなだけ拡散できる(その行為が倫理的にどうであれ)と思っている節があります。そして拡散された私の個人情報は一生消えることがありません。その一方で、電子書籍や、買い物で溜まったポイントなどのデータは、煙のようにふっと消えてしまいそうな気がするのです。だから私は紙の本を買います。ポイントカードはスタンプ式だと嬉しく(なくしますが)、ナビのない車に乗ると安心します。

 そうは言っても、私は交通ICカードを使っていますし、スマートフォンもSNSも使います。どれも最初は躊躇っていて、周囲より使い始めるのが遅かったのですが、スマートフォンに関しては持っていないと話にならないことも増えてきました。最近では恥ずかしながら、無意味に握りしめている時まであります。

 つい数十年前まで、誰も電話なんか持ち歩いていなかったのに、いまはスマートフォンやケータイがないと仕事にならなくなりました。誰も彼もが機械を所持する時代になったのです。恐らくもう少し未来には、生まれた時点で体にチップが埋め込まれるようになるでしょう(チップにはマイナンバーの情報が入ってる! うわあ……)。脳がパソコンと繋がるようになり、気分が悪い時は脳を取りだして治すこともできるようになります。そもそも医療が発達しまくって、誰でも150年くらいだったら生きられるようになるのです。よくわからないけど。でも、そうなったら人間ってなんでしょう。私ってなんなのでしょう。

 映画『エクス・マキナ』で、最先端のAI(人工知能)を観ました。それは質問に答えるだけでなく、自然な質問を相手に投げかけることができます。人間の感情を把握していて、感情的なそぶりも見せます。そして、とても美しい女性の姿をしていました。名前をエヴァといいます。いまはまだ映画の中のイメージに過ぎませんが、やがて現実にも現われるのでしょう。

 エヴァを見る時の気持ちは、荘厳な山々を眺める時の気持ちに似ています。圧倒される美しさと、手の及ばない強さ、妙な得体の知れなさに、敬虔な気持ちになるのです。

 近ごろ、現実のニュースでも頻繁に見かけるAIですが、そういった研究に疎い私の印象は子供の頃に見た映画、『A.I.』(2001年)から止まっています。

 人間の母親を永遠に愛するようにプログラムされた少年型のロボットが主人公ですが、母親はやがて、彼よりも人間である実の息子を愛するようになってしまい、少年型のロボットは母親の愛を求めて旅を続けることになるのです。当時の自分は、主人公と同じくらいの年齢だったので、耐えがたいほど胸が苦しくなったのを覚えています。ロボットの感情が人間よりも正確だったため、少年型ロボットが可哀想で、感情移入してしまったのです。

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