“ロックの聖地”が伝える、アメリカ文化の精神ーーISHIYAの『サンセット・ストリップ』評

 そんな逸話を聞いていると、筆者が体験してきたアメリカ文化への理解も深まる。セレブ文化に真っ向から喧嘩を売るアンダーグラウンド・パンクシーンでさえ、アメリカのエンターテイメント文化の影響がある部分も多い。金銭的な面から規模は違うが、狂乱のパーティーであったり、生き様としてのロックンロールは、同じようにクールであると認められ、受け入れられている。そして、そのクールさをリアルに味わった瞬間から、初めて独自のアメリカ文化を体験できたように感じる。

ファーギー&スラッシュ

 そこにあるのは、誰にも媚びずに自らの道を歩もうとする精神、オリジナルを尊ぶ価値観だ。サンセット・ストリップを中心とした西洋、特にアメリカエンターテイメント文化の根底には、その精神が流れているのではないだろうか。それは何もミュージシャンや俳優に限った話ではない。本作に登場する店なども、同様に独自の価値観を主張していて、それがどれだけ重要なことかを示している。そして、異なる価値観がぶつかり合い、切磋琢磨することで生まれた新しい文化が、この世にも珍しい地区を発展させ、存続させている。

サンセット・ストリップには、愛に飢えていたり心に傷のある奴が集まる。
どうせ死ぬなら、俺たちの前で死ぬといい。曲を書いてやるから。
キム・フォーリー/音楽プロデューサー

 セックス・ドラッグ&ロックンロールとはどんな価値観で、そこにあるアメリカンドリームとはどんな物語なのか。それを知るためには、本作を見逃す手はないだろう。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

■公開情報
『サンセット・ストリップ ロックンロールの生誕地』
4月23日より新宿シネマカリテにてモーニング&レイトショー、全国順次公開
出演:キアヌ・リーブス、ジョニー・デップ、シャロン・ストーン、ミッキー・ローク、スラッシュ(Guns N' Roses)、ビリー・コーガン(The Smashing Pumpkins)、レミー・キルミスター(Motörhead)、スティーヴ・ジョーンズ(Sex Pistols)、ヒュー・ヘフナー(「PLAY BOY」創刊者)、ダン・エイクロイド、アリス・クーパー、オジー・オズボーン、シャロン・オズボーンほか
監督・脚本:ハンス・フェルスタッド 『MOOG/モーグ』
撮影:アーリーン・ドネリー・ネルソン
製作:マット・ソーラム(ex Guns N' Roses)、スタン・バーティ、ボブ・ローズ ほか
配給・宣伝:CURIOUSCOPE
(C)2013, SUNSET STRIP THE MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://www.curiouscope.jp/SUNSET/

関連記事