悪趣味の限りを尽くしている映画ではあるが、とは言え、本作はあくまでフィクションであり、また荒唐無稽な粗筋であるがゆえに、ウィルスパニック映画／エンタテイメントとして楽しめる作品になっている（ちなみに製作は『プロジェクトＡ（83）』で知られるゴールデンハーベスト社だ）。もちろんエロ・グロ・バイオレンスは満載だが、そういった題材に興味があるなら必見の映画といえるだろう。まさに大人のための映画…三級片の名に恥じないエンタテイメント映画だ。

　今回は２回に渡ってアンソニーの映画を紹介してきたが、いかがだったであろうか。なお、最後の映画『八仙飯店之人肉饅頭』については、既に各地で語り尽くされている映画でもあるし、今回は省略する。ただ一言付け加えるとすれば、こちらは実録ものであり、それがゆえに本当に情け容赦も救いもない映画になっているとだけ言っておこう。『タクシー～』とも『エボラ～』とも異なる、強烈で一切の洒落のない残酷表現はトラウマ必至だ。

　映画は夢を描くものである。しかし、客が望む夢がいつも健全だとは限らない。そんな不健全な欲求に真摯な態度で答えたのが三級片であり、ハーマンであり、アンソニーなのだ。この三部作を見れば、彼らの最悪なものを望む観客への真摯さが読み取れるはずだ。

■加藤ヨシキ
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■作品情報
『香港Ⅲ級片スーパークレイジー極悪列伝　限定版DVD-BOX』
発売中
価格：12,312円 （税込）
出演: アンソニー・ウォン
監督: ハーマン・ヤウ
収録：『八仙飯店之人肉饅頭』、『タクシーハンター』、『エボラ・シンドローム』
公式サイト：http://super-crazy.united-ent.com/