不遇の作家・佐藤泰志『オーバー・フェンス』を山下敦弘監督はどう描くのか?

 一時期、小説家の夢をあきらめかけ、故郷函館に戻り、職業訓練学校に通っていたという佐藤自身の実体験をもとに執筆されたという本作。それにしても、なぜ今、佐藤泰志なのだろうか? そこにはやはり、今の社会的な状況も関係しているのだろう。逼迫した経済状況にある地方都市の現実。そして、そこに生きる若者たちの苦悩と孤独。格差社会と言われるようになって久しい昨今、佐藤が描き続けてきたものは、ある意味、彼が小説家として活躍した80年代後半(いわゆるバブル期だ)以上に切実なリアリティをもって、我々の心に響いてくるのではないだろうか。『オーバー・フェンス』の制作発表時に、山下敦弘監督は、こんなコメントを寄せている。

 「作家、佐藤泰志の『オーバー・フェンス』を映画化する。映画は空っぽになってしまったひとりの男と求愛し続ける女の話でもあるし、函館の職業訓練校に生きる無職の男たちの話でもあるし、もしかしたら若くして死んでしまった佐藤泰志自身の話になるのかもしれない…というか“話”に固執せず、その瞬間を生きている人間たちの映画にしたいと思う。そうすれば自ずと僕自身の話になるし、観ているあなたの話になっていくのではないかと思う。『オーバー・フェンス』というタイトルが示す通り、見えないけどそこにある何かを越えていく映画にしたい」

 “フェンス”を越えた先にあるのは“愛”、または“希望”なのか。あるいは、それとは違う“何か”なのか。映画『オーバー・フェンス』は、7月17日にクランクアップ。現在編集作業に入っており、2015年冬に完成する予定だ。

■公開情報
『オーバー・フェンス』
監督:山下敦弘
オダギリ ジョー 蒼井優 松田翔太
配給:東京テアトル+函館シネマアイリス(北海道地区)
(C)2016「オーバー・フェンス」製作委員会

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