細田守とミスチル桜井、創作について語り合う 細田「価値観をひっくり返すことに醍醐味がある」

 一方の桜井は、親子関係について「あまり決まりごとは決めないようにしている。(父親として)こうあるべき、とか。できれば子どもの成長と共に、自分の価値観もグラグラ変わりながら、一緒に変わっていきたいなと思う」との意見。また、たとえば子どもが通う幼稚園にてキャンプが開催されると、子どもが緊張してイライラすることがあるといい、「些細な出来事で心は変わっていくから、(その変化を)見逃さないように」しているという心がけを述べた。

 ここでキャスターが桜井に「作品を作るときに大切にしていること」を問いかける。桜井の理想は「まず日常があること。リスナーの人たちの身近であること」が第一で、その上で「既成概念みたいなものを、どこかで変えられる力を持った視点を探してはいます」と明かした。細田も「表現というのは、価値観を鮮やかにひっくり返すことに醍醐味がありますよね」と同意。「それがうまくいったら痛快だろうけど、なかなかそういうふうにならない」と苦笑しつつも、「1曲を聴いたあとや、映画を観たあとに、ぜんぜん世界が違って見えるみたいになると、いいんですけどね」と、クリエイターとしての志を述べた。

 また桜井にとって、ものづくりに対するプレッシャーは「ヒットし続けなくてはならない」ということではなく、「いいものが作れなることへの怖さ」だという。世の中が求めるものから自分がズレているかもしれない、という危機感を常に抱えていると語り、細田も頷いた。

 アニメーション/音楽とジャンルは違うが、ともに高い人気を誇る2人。大きな影響力を持つクリエイターとしての"産みの苦しみ"がうかがえる対談だった。

(文=岩倉マコ)