大型商業施設の近所の商店街は瀕死……? 変わりゆく街並みに切なさ漂う『海行くカメら』

大型商業施設の近所の商店街は瀕死……?

 大型商業施設の建設によって経済的な影響を受けた、とある商店街のお店の数々。そのひとつである電気屋の娘である主人公と、大型商業施設オーナーの娘であり長らく入院しているタツミはひそかに交流を続けていた。SNSに投稿されている漫画『海行くカメら』で描かれるのは、そんな2人の関係の変化だ。

 ある日の夜、タツミは病院を抜け出し主人公の家を訪ねる。2人の関係の結末、そして幼き日のとある出来事とはーー。作者である浅海まいさん(@asami_maimai)に本作を創作したきっかけ、少女たちの関係を描くなかで意識していることなど、話を聞いた。(あんどうまこと)

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『海行くカメら』(浅海まい)

ーー本作を創作したきっかけについて教えてください。

浅海まい(以下、浅海):本作は数年前、主宰した合同誌の収録作として描いた作品のリメイク版です。また田舎の風景と浦島太郎をベースにつくった作品でもあります。浦島太郎のラストシーンでは時間が一気に流れて、浦島太郎だけが時代に取り残されてしまう。そんな様子を本作では街並みが変わっていく描写で表現しました。

 作中に登場するカメラは「玉手箱」の役割を果たしています。時代が移り変わり、街並みが変わってしまっても、過去に触ったカメラという「玉手箱」を通して当時の記憶を想起したり、再び昔のような関係に戻ることができる。そんな媒体としてカメラを描きました。

ーー終盤、2人が海へと向かうシーンが印象的でした。

浅海:あのシーンは自分でも映画っぽく描けたなと思っています。制作当時は魚喃キリコ先生の漫画『blue』(マガジンハウス)を実写化した映画を見ていて、その作品には新潟を舞台に少女2人が海まで歩く場面があるのです。本作でもそのシーンを参考にしながら2人が海へ向かうシーンを描きました。

 私は新潟県の出身なので、作品の題材やモチーフには新潟の風景が多いです。作中に登場する商店街のアーケード通りや、田んぼの中にポツンと建っている大きなデパートも、新潟市にある大型商業施設付近の風景をイメージして描いています。

ーー少女たちの関係を描く上で意識していることは?

浅海:たとえ離れ離れになったとしても、無意識のうちにお互いの存在が「背骨」のように土台として残っている。未来でどんな経験をしたとしても、その瞬間の出来事が人生の確かな土台になっているような関係を意識して描いています。

 誰かのことを想ったり、考えたりすることって、今の言葉で言えばコスパやタイパが悪くて、無駄なことをしているようにも見えると思うんです。でも、そうやって無駄なことをする姿ってどこかカッコいいとも思っていて。本人たちは傷ついたり、真剣に悩んだりしていても、読んでくれる人には笑って温かく見守ってほしいです。

ーー漫画を描き始めたきっかけを教えてください。

浅海:中学生の頃にクラスで漫画を描いている人がいて、「自分の方が上手いぞ」という対抗意識を抱き漫画を描き始めました。描いた漫画を友だちに見せて、喜んでもらえるとうれしかったですね。高校を卒業後、自分の漫画を見せる相手がいなくなってからは、SNSや「コミティア」などの同人誌即売会で作品を発表するようになりました。

ーー同人誌即売会に参加するようになった経緯は?

浅海:2018年頃にはじめて会場へ行ったのですが、とても楽しくて。横谷スイミー先生(現・横谷加奈子)や窓ハルカ先生といった、コミティアに出展している作家さんたちの自由で魅力的な作品に触れて「こういう漫画もありなんだ」「自分もこんな漫画を描いてみたい」と影響を受け、同人誌即売会に参加するようになりました。

ーー今後の目標について教えてください。

浅海:2026年10月から「COMIC FUZ」にて『ウスい毎日を綴じてやる!』という漫画の連載が始まりました。この作品は新潟を舞台にした地方同人即売会の話で、自分と重なる部分も多い作品です。まずは漫画の連載を頑張りたいと思います。

 また毎年、即売会で出している合同誌の制作も続けていきたいです。将来的には同人誌を出せるような場を守るため、即売会の主催・運営にも関わっていけたらいいなと考えています。

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