『FX戦士くるみちゃん』新たなムーブメントに? ゆるふわ絵柄で描かれる“投資ホラー”の魅力

『FX戦士くるみちゃん』ムーブメントに?

 新NISAのスタートもあり、若者の間でも「貯蓄から投資へ」の意識が広がりつつある。そんななか、10月1日にアニメ放送が始まったのが、『FX戦士くるみちゃん』だ。原作は「月刊コミックフラッパー」で連載中の同名漫画(原作:でむにゃん・作画:炭酸だいすき/KADOKAWA)で、ゆるふわ系の絵柄とは裏腹な“投資ホラー”な内容が放送開始から話題を呼んでいる。

 物語の出発点となるのは、主人公・福賀くるみの母親がFXで2000万円を失い、自ら命を絶ったという暗い過去だ。それから5年後、大学3年生になったくるみは、自身もFXの世界へ足を踏み入れる。

 アニメ第1話では、本編の前に「この物語はフィクションです」と注意書きが表示され、FXでは預けたお金を上回る損失が生じる場合があることや、過度な取引が生活に支障をきたす恐れについても警告されたが、実際、物語では、FX初心者が陥りやすい失敗が具体的なエピソードを通して描かれている。その一つが、「強制ロスカット」を避けるために追加資金を投入する行動だ。強制ロスカットとは、損失が一定以上に膨らんだ際、これ以上損失が広がらないよう、FX会社が保有中の取引を強制的に終了させる仕組みのこと。作中では、ロスカットが迫ったくるみが、父親のタンス預金から300万円を持ち出して追加入金する。損失を確定させたくないあまり、手を付けるべきではないお金にまで頼ってしまう姿が、彼女の追い詰められた心理を物語っている。

 くるみがFXを始めた理由も重要だ。母親が失った2000万円を取り戻したいという思いが、彼女を取引へと駆り立てる。しかし、過去の損失を埋めることが目的になると、「次こそ取り返す」という気持ちが先行し、目の前の状況を冷静に判断しにくくなる。損失を取り返そうとしてさらにリスクを取る。その悪循環が、くるみを追い詰めていく。

 含み損が膨らむなか、自分の判断を正当化してしまう姿も見逃せない。相場が予想に反して動いても、「いずれ戻るはずだ」と希望的な見通しにすがり、取引を続けてしまう。さらに、値下がりしたところで買い増す「ナンピン」も、損失を確定させたくない心理と結びつく。反転すれば損失を減らせる可能性はあるが、下落が続けば損失は一段と膨らむ。

 取引のスリルにのめり込んでいく過程も、本作の見どころだ。一時的に大きな利益を得たくるみは、FXで稼ぐことへの期待を強める。一度の成功が自信につながる一方、「次も勝てる」という思い込みを生み、取引を重ねるきっかけにもなってしまう。

 また、友人の芽吹は、他人の助言を信じて「売り」を選択し、大きな損失をこうむる。一方、助言した萌智子は「買い」で取引していた。この芽吹の失敗は、相場の知識だけでなく、情報をうのみにせず自分で判断することの難しさを示している。

 取引の影響は、資金の増減だけにとどまらない。含み損を抱えたくるみは眠れない夜を過ごし、精神的にも追い詰められていく。取引が頭から離れず、日常生活に集中できなくなれば、冷静な判断を取り戻すことも難しい。生活費にまで手を伸ばせば、相場での失敗は暮らしそのものを脅かす。

 近年は、ニコチン依存の猫を描く『ヤニねこ』や、過食にのめり込む女性を描いた『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』のように、愛らしい絵柄と登場人物の特異行動とのギャップが印象的な作品が話題となった。本作もアニメ化を機に、新たなムーブメントを巻き起こしそうだ。

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