絢香が語る、デビューから20年の歩みと未来への想い「小さくても光となって届くような歌や音楽を届けたい」

絢香『にじいろのひかり』

 2006年2月1日に1stシングル『I believe』でメジャーデビューしてから、今年20周年を迎えたシンガーソングライターの絢香。この20周年に際し、地元・大阪でのフリーライブ、ベストアルバム『20 Lights – The Collection –』のリリース、公式YouTubeチャンネルでの動画公開など、さまざまな施策を行ってきた。その目玉と言えるのが書籍『にじいろのひかり』の出版と企画展の開催だ。

 『にじいろのひかり』は、「三日月」「にじいろ」「ありがとうの輪」など絢香の転機となった人気楽曲10曲をピックアップ。楽曲にまつわる絢香の思いがイラストレーター・西淑の描き下ろしイラストとともに綴られているほか、音楽評論家・小貫信昭による楽曲解説、さらに三浦大知やアンジェラ・アキの寄稿、ファンのメッセージも掲載されている。絢香の主観だけでなく多彩な視点によって彼女と楽曲の魅力が浮き彫りとなり、絢香の人生が歌になり、その歌がファンの人生に寄り添っていることがより強く感じられる一冊となった。

絵本を読むように楽しんでいただけたら

――出版にいたった経緯を教えてください。

絢香:20年も歌い続けて来られるなんて、デビューのころは想像もできなかったですが、ありがたいことにここまで歌ってこれました。ファンの方から届くメッセージを読むと、人生の色々な場面で私の歌を聴いてくださっていて……ファンの方からのメッセージを読みながら、そんな曲たちを今まで以上に掘り下げた作品を、この20周年という節目で作りたいと思いました。この20年を振り返りながら、自分の音楽に対する想いや、この20年間での様々な出来事、それを受けての変化など、歌詞についてはもちろんですが、今まで語ってこなかったような内容まで綴る一冊となりました。自分にとっても大切な作品です。

――文章だけでなくイラストや写真もあり、ファンのメッセージは付箋で貼り付けられているようなデザインになっていて、全体の色味もとてもカラフルで見応えのある作品だと思いました。

絢香:「絵本」というイメージがはじめからありました。イラストとともに歌詞に込めた思いを届けたい、なるべくシンプルに言葉を届けたい、っていうのがこの本の制作のスタートだったので。例えば「にじいろ」のページは絵本を読むように楽しんでいただけたらいいなぁ。私も、この優しい世界観がとても好きです。まだ文字が読めない小さなお子さんでも、パラパラとページをめくりながら楽しめるんでもらえたら嬉しいです。

――イラストを手がけた西淑さんは、書籍の装丁などたくさん手がけられていますよね。

絢香:はい。本当にすてきな絵ばかりで。表紙の私のイラストも描いてくださったんですけど、、『にじいろのひかり』というタイトルに込めたコンセプトがまっすぐ伝わってくるような、ポジティブで綺麗な色使いで描いてくださって。最初に見たとき本当に感動しました。西さんとご一緒させていただくのは初めてだったんですけど、お願いできて本当に良かったなって。ただカワイイだけじゃなくて、歌詞に込めた思いの奥深いところまで表現してくださって……本当に素晴らしい方と出会えてとてもうれしかったです。

――絢香さんから、こういう絵を描いてほしいと提案したのではなくて。

絢香:楽曲を聴いていただいて、西さんが感じたままに描いていただいたので、私も毎回あがってくるのをすごく楽しみにしていました。

――個人的に「夢幻花火」がとても素敵だなと思いました。

絢香:私も大好きな1枚です。楽曲のコンセプトが、「今の私と小さいころの自分が対面する」という少し幻想的な情景なのですが、それが絵になって、「まさにこのイメージだった!」と感動しました。

――絢香さんのお気に入りの絵は?

絢香:どれも大好きなので一つを選ぶのは難しいですが、今お話しした「夢幻花火」も好きですし、今私が背にしている「にじいろ」のイラストもすごく好きです。あとはやっぱり表紙ですね。

――表紙には絢香さんが描かれていて、バックがピンク色。それも優しい色のピンクで。

絢香:そうなんです。これはアートディレクターの&Rainbow谷口佐智子さんが、「こういうピンクはどうでしょうか?」と提案してくださったのですが、「ぴったりだな」と思いました。

――絢香さんのイメージにピンクは無かったので少し意外でした。

絢香:そうですよね。今回の『にじいろのひかり』は、いろんな色が重なって20年を表現しているので、そのポジティブで未来に向かっていくエネルギーを表現するのに、ぴったりな色だなと感じています。

一つひとつの出来事が重なって今の自分が作られている

――20周年を迎えて、一番思い出されるのはどんなことですか? つらいことだったのか、楽しかったことだったのか?

絢香:それはもう絶対に楽しかったことばかりです。この本でも書いているように、悩んだりつらかったりいろんなことがありました。でも、ステージに立ったときの喜びや、ファンのみんなと作り出した笑顔、その一つひとつの経験が重なって、混ざりあい、今の私を照らす『にじいろのひかり』になっているんです。さっきも楽屋でデビュー当時からのスタッフと「あのMVはあそこで撮影したね」なんて話していたら、思い出話が止まらなくなって。それくらいいい思い出がいっぱいです。

――当時は苦しいなと思っていたこともたくさんあったと思いますけど、時を経て今思い出すといい思い出になっていたというのは、つまり消化できていたと。

絢香:本当にそうだと思います。「にじいろ」を書いた背景も本に記しているのですが、当時はすごくつらいできごとがあって、どん底まで落ち込んでしまって、文字通り視界から色が消えてしまうような感覚を味わったんです。そこから生まれたのが「にじいろ」でした。でも時間を経て振り返ってみると「あの時間も自分にとって意味のある過程だったんだ」と受け止められるようになって。一つひとつの出来事が重なって今の自分が作られているのだと、実感しながら紡いだ曲でした。これは楽曲1曲1曲に対しても、この20年という歩みに対しても同じことが言えます。当時は「この暗闇から抜け出せるのだろうか?」と途方に暮れることもあったけれど、過ぎ去ってみれば、その経験こそが自分をまた一つ強くしてくれた。そうした一つひとつの光と影の重なりが、今回の『にじいろのひかり』というタイトルにもつながっています。

――同じ書く作業でも、歌詞を書くことと今回の執筆にはどんな違いがありましたか?

絢香:今回は、より自分を見つめ直す作業でした。歌詞を書いた背景もそうですし、この20年を丸ごと振り返っていろんなことを改めて言葉にするのは初めてのことだったんですけど、文章にすることでこんなにも自分のことが整理されるんだなと感じました。だからこの本を制作した上で、ツアーに臨めるのが、すごく良かったなって思います。楽曲への思いや、作った当時の自分を思い出せたので、ある意味でセラピーのような時間だったと思います。経験を言葉にして文字にする作業は、自分を浄化することでもあるのだなと思いました。

――全部けっこう覚えているものですか?

絢香:振り返って書いていると、思い出していきましたね。普段は新しい曲ができてリリースしたあとは、次へ次へと進んむので、過去の曲を聴き返すこともあまりないのですが。今回は節目として1曲1曲じっくり聴いて掘り下げていったら、当時の景色や思いが、本当に鮮明によみがえってきました。

――音楽や歌って、思い出と結びついているから記憶を喚起しますよね。それはファンだけじゃなく、ご本人もそうなんですね。

絢香:はい。私自身もいちリスナーとして、「この曲はあの頃よく聴いていたな」と当時を思い出すことがあります。、だからライブで涙を流しながら歌を聴いてくださる方を見ると、「どんな思い出と一緒に聴いてくれているのかな」とグッとくることも多いですね。

出会いに恵まれたのも、20年やって来たからこそ

――本の出版と同時に『絢香 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR』もスタート、ファイナルは11月29日の東京・日本武道館です。これまで歌ってきた曲も、今までとは歌うときの気持ちが違うでしょうね。

絢香:楽曲って不思議なもので、作った当時と今とでは自分自身の感じ方も変わっていくし、「あなた」という対象ひとつとってもまったく違う景色が見えてくるんでます。「三日月」は10代のころに一人で上京するときの寂しさや心細さから生まれた楽曲でした。でもこの20年本当にたくさんの方に聴いていただいて、もう今は自分一人の曲ではなくて、みんなの人生が重なった曲になっているんです。今回のツアーでは特にそんな思いを強く感じながら歌っています。

――また今作には、三浦大知さんとアンジェラ・アキさんの文章も掲載されています。絢香さんに向けたお二人からの言葉は、どのように受け止めましたか?

絢香:本当にうれしかったです。お二人ともアーティストとして大尊敬していますし、人としても大好きなんです。そんな二人が、言葉を綴ってくれたことで、私にとってさらに特別な一冊になりました。

――同業者から自分の歌や作品の魅力について、直接言ってもらう機会ってなかなか無いですよね。

絢香:「そんな風に思いながら聴いてくれていたんだ!」って、改めてかみしめるように読ませていただきました。

――アンジェラさんは絢香さんの歌の「余白」の魅力について書かれていました。

絢香:アンジェラって言葉がいつも美しくて、とても聡明な女性です。そんな彼女が私について書いてくれた文章がまた美しくて……私の本の一部として、載せさせていただけたことは本当にありがたいことだなと思います。

――次にお二人が周年の何かを出されるときは、逆に絢香さんが文章を寄せないと。

絢香:ちょっとドキドキします。あんなに素敵な文章を書いてくれて、私も上手く書けるかなって(笑)。でもそうやって高め合える仲間の存在もまた、20年続けてきたからこその宝物です。プライベートでも仲良くしていただいていて、そういう出会いに恵まれたのも、20年やって来たからこそだなと思います。

――レコーディングの様子も細かく書かれていて、マイクの機種名まで出て来たり、音楽好きのファンにはたまらない部分もありました。

絢香:なかなか語る機会もないし、普段は見えない部分。どんなマイクで録っているかまではCDにクレジットされないですしね。そういう意味ではコアな情報もたくさんあると思います。

――またファンの方のメッセージで、結婚式で絢香さんの曲を使ったという話が、すごく多かったことも印象的です。

絢香:ありがたいことに本当に多いんです。ファンだけじゃなく、知り合いが結婚式に行って「にじいろ」や「ありがとうの輪」が流れたと教えてくれることもよくあります。その人にとって人生のとても大事な日に、私の曲を選んでいただけるなんて、本当に光栄なことだと思います。

――展示では西淑さんのイラストや歌詞だけでなく、「夢幻花火」のデモ音源も聴けるとのこと。

絢香:そうなんです。曲ができてすぐに録った、できたてのデモ音源です。アレンジのベースになるもので、それをみなさんに聴いていただく機会はなかなかないので、制作過程の一部を少しのぞき見した気分になっていただけたら、曲の聴き方もまた変わったりして面白いのではないかと。

――デモは楽器を弾きながら作るのですか?

絢香:ピアノで弾き語りをして歌を録り、コーラスを重ねるところまで作ります。今回はその状態のものを聴いていただけます。あと展示のポイントとして、本のなかのイラストが大きなパネルになっているから迫力があって、細かいところまで楽しんでいただけると思います。グッズも西さんの世界観あふれる可愛いアイテムばかりなので、ぜひ手に取っていただきたいです。

――本のなかで「おばあちゃんになっても歌っていたい」と。絢香さんがおばあちゃんになったとき、どんなことを歌っているのでしょうね。

絢香:まったく想像つかないですし、ちょっと今はまだ考えたくないです(笑)。

――でも、この本には「人生が歌になっていく」という言葉も。そう思うと老いることも、きっと楽しみになっていくのでは?

絢香:そう思っていられる自分でいたいです。つねに音楽が隣にあって、そのときの自分が感じたままを歌にしていくんだと思います。きっと歌もまた変化していくだろうし、どうなっていくのか確かに楽しみですね。

――きっと元気で明るいおばあちゃんになるのでしょうね。

絢香:そうなるためにも今から健康にも気をつけないといけないなと思っています!(笑)

――今から健康のためにやっていることはあるのですか?

絢香:子供が生まれてから10年以上、「夜10時に寝て、朝5時半に起きる」というルーティンをずっと続けています。喉も身体も肌も、睡眠がしっかり取れていないと回復が遅いので。規則正しく、睡眠の質を上げて、あとは食べもの、身体に入れるものも若い頃より気をつけるようになりました。

――睡眠は認知症予防にもなるそうですよ。

絢香:やっぱりそうですよね。しっかり睡眠が取れていると、頭も冴えるし、身体も動くし。10年以上実践してきて、睡眠の大切さは実感しています。

――この本を読みながら、寝ちゃってもいいかもしれないし。

絢香:そういう身近なアイテムになったらうれしいですね。それに、表紙が本当に素敵なので、お部屋に飾ってほしいです。私はベストアルバムの隣に並べて飾ろうと思っています。

――では最後に、読んだ人にとって、どんな本になったらいいですか?

絢香:いつも音楽を作る時に必ず思うのが、小さくても光となって届くような歌や音楽を届けたいということ。この本も読み終えたときに心が温かい気持ちになったり明日につながるような小さな光として届いたら、これ以上に幸せなことはありません。

■書誌情報
『にじいろのひかり/絢香』
発売日:2026年9月18日(金)
価格:3,850円(税込)
仕様:A5変形・188ページ・オールカラー
特設サイト:https://www.maruzenjunkudo.co.jp/pages/ayaka_niji

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