【漫画】メディアでも人気の学者、過去のいじめが判明したら? 『イエローインザブルー』が映し出す加害者と被害者の“空気感”
著名人の過去のいじめをめぐる炎上をきっかけに着想を得て制作されたという漫画『イエローインザブルー』。そうした社会の一場面を作品に昇華させた挑戦的な作品で、「第91回小学館新人コミック大賞」で佳作を受賞した。読み応え十分の本作を手掛けた作者の大越サナエさん(@_i_sne)に制作の経緯を聞いた。(望月悠木)
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当時のSNSの空気感
――なぜ『イエローインザブルー』を制作したのですか?
大越:本作は4年前に制作した作品なので、記憶が薄れている部分もあるのですが、当時のSNSを見ていて印象的だったことを漫画にしました。
――その印象的だったこととは?
大越:あの頃は「トレンドになっていることに反応しなきゃいけない」みたいな空気があって、その意味ではバズりも炎上も、ほとんど同じもののように見えました。実際にはそれぞれの話題に違う人がばらばらに発言していても、画面の上では肯定的か否定的か、風見鶏のような反応の塊として見えてしまうのも特徴的でした。それが毎日ものすごい速度で行われていることに問題意識がありました。
――たしかに毎日何かしらのバズや炎上が目まぐるしく話題になっていましたよね。
大越:今はそういう仕組みが色々と周知されていて、事態がさらに加速しているというよりは、みんな冷めてしまっている感じを受けます。バズることも炎上することも、昔ほどの重みはなくなったのではないかと。だから、今この作品を読むと、少し古さも感じます。
――いじめられていた経験を持つ音村の葛藤を掘り下げつつ、彼を導く立場のもう一人の主人公である光村の過去が明らかになり、事態は急変する、という展開でしたね。
大越:いじめを題材にしたのは、SNS上で著名人の過去のいじめに関する炎上を見かけたことがきっかけで、光村がネット上で持ち上げられた後に、失墜する様子を軸に描き始めました。音村の葛藤は、自分の感想に近いです。
――明確な「答え」を示すことはせず、心情の揺れ動きを中心に見せる内容でした。
大越:人を傷つけたり傷つけられたりした経験にどう向き合うかは、決まった答えのない、一人一人が向き合うしかない問題です。あったこと、思ったことを羅列しただけと言えばそれまでですが。
――光村や音村など、登場人物はどのように作り上げましたか?
大越:光村は普遍的な性格にしたつもりです。一方で顔はとにかく美形にする必要がありましたが、かなり難しかったです。音村に関しては「とにかくスキンヘッドを描きたい」と思っていて、あの外見になりました。本当は根明なうえに真剣すぎてちょっと煙たがられかけている人が好きで、大学での振る舞いはあのような感じになりました。
――本作は「第91回小学館新人コミック大賞」で佳作を受賞されましたが、審査員の講評などで印象に残っていることはありますか?
大越:業田良家先生の講評が特に嬉しかったです。というか、業田先生の講評が好きで、自分以外の方の作品への講評もかなり遡って読みました。正直かなり悔いの残る作品だったので、賞をいただけたことは幸運でした。
――今後の目標などを教えてください。
大越:「Quick Japan」(太田出版)にて、『可愛くなくても旅をする』という作品を連載させていただいています。タイトルどおりの作品にしているつもりです。ぜひよろしくお願いします。「売れたりせずに、漫画のお仕事だけで人並みの暮らしがしていけたら」と常々思っているのですが、売れたいと思うことよりも傲った望みだと我ながら思います。