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クレームの連続に雑な脱税……税務署の仕事はうつになるほどハード? 『税務署員うつうつ日記』に共感

 7月30日のAmazon売れ筋ランキングで69位にランクインしていたのが、『税務署員うつうつ日記――税務署一筋30年、徴収・窓口・税務調査、激務でうつになりました』(三五館シンシャ/フォレスト出版)である。実際に税務署に勤務していた著者による、税務署職員の仕事を綴った書籍だ。

身構えてしまう税務署員の実像とは

大蔵主税『税務署員うつうつ日記――税務署一筋30年、徴収・窓口・税務調査、激務でうつになりました』(三五館シンシャ/フォレスト出版)

 税務署と聞くと、つい身構えてしまうという人は多いのではないだろうか。かくいう自分もその一人である。フリーランスのライターなのでもちろん確定申告は毎年行なっており、わからない点は最寄りの税務署などで相談しつつ、できるだけちゃんと税金を納めようとあれこれやっている。

 が、実際のところ自分は税の専門家でもなく、その上死ぬほど数字に弱いため、頑張って申告しているもののどうしても税務に関する苦手意識が抜けない。毎年「怒られませんように……」と祈りながら所得税を申告しているというのが、正直なところである。ゆえに、税務署で働いている人というのは自分にとってうっすらとした畏怖の対象であり、親しさを感じることは今まであまりなかったと言っていい。そんな税務署員がその内実を赤裸々に書いた本ということなら、個人事業主としては興味津々である。

 本書は三五館シンシャが出版している「日記」シリーズの新刊で、このシリーズではこれまでタクシードライバーや交通誘導員など、主に高齢の働き手たちが感じる悲喜こもごもを綴ってきた。本書の著者である大蔵主税氏も関西の私立大学卒業後30年にわたって税務署職員として仕事をしてきた人物で、タイトルの通り30代でうつ病を発症、二度にわたって休職した経験を持つという。

 本書は税務署員の日常業務から、著者の大蔵氏が税務署に勤め始めるまでの経緯を解説。さらに税務署員といえば……というイメージのある仕事であろう、企業や個人の会計情報から申告逃れを見つけるプロセスや、実際の税の徴収や差し押さえの仕事内容までが詳細に語られる。そしてそれらの業務の中で大蔵氏がうつ病になってしまった経緯、「仕事に没頭しない」ことを貫いている現在の働き方に至るまでが、率直にまとめられた内容だ。

「怖い役所」も悩める普通の職場

 どんな仕事も大抵はそうだが、税務署員も役所勤めの公務員であり、その仕事はけっこう地味である。ストレートにお金にかかわる仕事であり、どんな場合でも最優先しなくてはならないという窓口業務はクレームの連続。一方で税務調査にあたっては「調べたけれど特に何もありませんでした」という結果は歓迎されず、税務署員として調査に動いた以上は不正の証拠を掴んでくることが求められる。大蔵氏が神経をすり減らしてしまったのも納得の、相当ハードな職場であることは間違いない。

 本書には、税務署での花形業務である法人への調査についても書かれている。大蔵氏も所属していた法人課税部門は、名前の通り法人税に関する不正を調査する部門。そこでまず問題になるのが「どの会社に調査に向かうか」なのだが、それを選定するにあたっては数十社の法人名が並んだリストを確認し、一番不正の可能性が高い法人を選ぶという。それらのリストもさまざまなきっかけを掴んで調べた税務署の専門部署が作ったものであり、法人課税部の税務署員はその情報をもとに現地へ赴き、怪しい会計処理などがないかチェックをするのだ。

 本書を読んでびっくりしたのが、「そんなにみんな税金逃れをしているのか」という点だ。勤務地などはぼかして書かれているが、どうやら大蔵氏が勤務していたのは地方都市の税務署が多いようで、大都会で仕事をしていたというわけでもないらしい。にもかかわらず、担当区域の企業を対象にしただけでも、数十社に及ぶ不正の疑いのある法人のリストができてしまうのだ。

 中にはうっかりミスをした会社もあったかもしれないが、本書に書かれている例でいえば「領収書に書かれている数字の左端に、後から『1』を書き加えて1万円分経費を水増しした」というような、ガバガバすぎるやり口で税金をちょろまかした企業もあったらしい。そんなすぐ怒られそうな水増しにトライするとは……。自分は知らなかった世界だが、どうやら税金に関する不正というのは皆けっこう軽率に挑戦してしまうもののようだ。それだけ企業にとって「税金を逃れられる」ということは魅力なのだろう。

 これらの激務によって大蔵氏は徐々に精神的にすり減ってしまい、うつ病を発症。休職と復帰を繰り返すうち、没頭しすぎず程々で仕事を回すことを意識するようになる。そんな中、税務署といえど近年のコンプライアンスは無視できず、「叱って伸ばす」式の人材教育は不可。電子取引や暗号資産など調査担当者に求められる知識は急速に増えたのに、団塊世代のベテランが大量退職してノウハウの継承もままならない。人材不足の中入ってきた新人を教育する余裕もなくなり、新人は一人前になる前に辞めていく。全国のあらゆる仕事で聞かれるような悩みと、税務署も無縁ではないのである。個人事業主にとっては恐怖の対象だが、同時に普通の「職場」でもあることが、本書を読むとわかってくる。

 自分のイメージ的には「怖い役所」であり、できるだけ接点を持ちたくないと思っていた税務署。しかし当然ながら働いている人は人間であり、感情もあれば精神的にしんどくなったりもする。『税務署員うつうつ日記』は、そんな当たり前のことに改めて気付かされた本であった。正直なところ税務署に対する苦手意識はまだあるものの、働いている人々に対する気持ちはちょっと変わったように思う。「税務署はなんだか怖い」と思っている人にこそ、オススメしたい一冊である。

■書誌情報
『税務署員うつうつ日記――税務署一筋30年、徴収・窓口・税務調査、激務でうつになりました』
著者:大蔵主税
価格:1,540円
発売日:2026年7月21日
出版社:三五館シンシャ/フォレスト出版

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