【漫画】小学生の女の子、男の子に伝えたかった想いとは? 感情表現の難しさ描く『笛吹き魔法のゆめ』
自分の気持ちを込めて思いを伝えれば、相手にちゃんと伝わるかもしれない。Xをはじめとする各SNSで投稿された漫画『笛吹き魔法のゆめ』の主人公は、感情表現の苦手な小学生の女の子。
作中で描かれるのは、とある男の子へ自分の思いを伝えようとする彼女の葛藤や緊張、ほんの少しの喜びと絶望ーー。主人公の抱くさまざまな気持ちが、その表情からひしひしと伝わってきてしまう作品だ。
切なくもあたたかな本作は、作者・神崎ミーコさん(@miko_kanzaki_w)の実体験から生まれた作品なのだという。本作の背景について、話を聞いた。(あんどうまこと)
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ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
神崎ミーコ(以下、神崎):本作の主人公のように、私も言葉にして自分の思いを伝えることが苦手で。相手を不快にさせてしまった時に「あなたを不快にしたくてしたわけではない」という弁明ができず、誤解されたまま関係が途切れてしまうことが度々ありました。
今回の漫画を描く少し前にも同様の出来事があり、自分の落ち込んだ気持ちを紛らわせるために本作の執筆に至りました。
ーー「自分の思いを伝える」という点では、主人公が男の子にリコーダーの音色で思いを伝えようとするシーンが非常に印象的でした。
神崎:言葉で伝えられない思いを音として伝えようとするものの、相手には思いが伝わらない。このシーンは自身が何度も直面してきた場面なので、私も印象に残っています。
ーー主人公は男の子へ2度にわたってリコーダーを吹きました。その意図は?
神崎:女の子は彼女なりに「誤解を解きたい」「思いを伝えたい」とあがいたのだと思います。1度目の笛を吹いたあと、女の子は改めて思いを伝えようとチャレンジするのですが、やっぱり伝わらなくて……。これも自分の学生時代にも当てはまる体験があり、本作ではその体験を再現してみようと思って描きました。
1度目の笛を吹いたあと、もしかしたら女の子は再び笛を吹くのではなく、男の子に言葉で思いを伝えた方がよかったのかもしれません。ただ、ここで主人公が喋ってしまうことは本作のテーマでもある「自分の思いを伝えられない」から逸脱してしまうので、あえて主人公が必死に笛を吹く様子を描きました。
ーー本作にはモノローグ(独白)が一切描かれておりません。
神崎:状況や心境を安易にモノローグで説明してしまうことも、本作のテーマからそれてしまいます。本来、人の考えていることは目に見えません。心境を読者に容易に伝えることのできるモノローグに頼らず、なるべく現実に即した作品になるように意識しました。
ーーラストシーンはあたたかさと寂しさが同居する「余白」のある終わり方でした。
神崎:女の子は悲しみの気持ちを込めてリコーダーを吹いていますが、楽しげな音に聞こえて、笑顔になる人もいるかもしれない。最後まで「すれ違う」ということを描きたくて、本作のような幕引きにしました。
どんな場面でも等身大の自分を受け取ってほしいという気持ちがあり、本作のラストシーンのようなポジティブに勘違いされることも、やはりどこか苦しいなという思いがあります。
ーー本作は神崎さんにとって初めて描き上げた漫画作品だと伺いました。
神崎:昔から漫画が好きで、いつかは漫画を描いてみたいという思いがありつつも技術が足りず、作品を描くには至りませんでした。ただ自分が落ち込んだタイミングで「実体験をもとに漫画を描こう」と思い、本作を描き上げることができました。
本作の制作を通じて自分の感情を外に取り出すことができ、心が楽になりました。自分の思いを相手に伝えられないことが悩みでしたが「漫画なら自分の気持ちや思いを人に伝えることができるかもしれない」という希望が見えました。
ーー今後の活動について教えてください。
神崎:本作は読者の方からさまざまな反応をいただくことができ、恥ずかしくもあり、うれしくもありました。これからも何か壁にぶつかったり、別の悩みを抱くことがあると思うので、そのたびに漫画を描くことで自分の思いを昇華させながら、人生を通じて漫画と向き合っていきたいです。