山﨑賢人、舘ひろしら熱演『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』の秀逸すぎる“映画アレンジ”を解説

※本稿は映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

 山﨑賢人が主演を務める『ゴールデンカムイ』の実写映画第2弾となる「網走監獄襲撃編」が3月13日に公開された。週末3日間で動員24万6900人、興収3億6800万円を記録。興行収入約30億円の大成功を収めた前作と変わらぬ勢いを見せている。

 原作は累計発行部数3000万部を突破する野田サトルの人気コミック(集英社刊)。明治末期の北海道を舞台に、「不死身の杉元」こと杉元佐一(山﨑)がアイヌの少女アシリパ(山田杏奈)と出会い、第七師団の鶴見中尉(玉木宏)や新選組・土方歳三(舘ひろし)らによる莫大なアイヌの金塊を巡る争奪戦に身を投じていく物語だ。金塊を隠した「のっぺら坊」がアシリパの父親である可能性が浮上し、物語の舞台はついに彼が収監されている網走監獄へと移る。

 本作の最大の魅力は、制作陣のリスペクトが伝わる「原作再現度」の高さだろう。だが、そこにあえてアレンジや補完を加えることで、原作とはまた違う実写化ならではの魅力を引き出している。

 とりわけ“攻めの演出”が見られたのが、原作ファンも注目していた「ラッコ鍋」のエピソードだ。ゲリラ豪雨で足止めを食らったアシリパたち女性陣に対し、無事宿に着いた男性陣は暖を取るためラッコ鍋で腹ごしらえを始めるが、次第に妙な気分になっていく。アイヌの伝承で「男女同数で食べなければならない」とされるラッコの肉には強烈な催淫作用があったのだ。その匂いに当てられた山﨑、眞栄田郷敦、矢本悠馬、池内博之、大谷亮平といった日本を代表する俳優たちが、発情を抑えきれずに「恍惚の表情を浮かべながら相撲をとるシーン」は、俳優陣のキャリアが心配になるレベル。原作では3ページほどの紙幅だが、スローモーションを駆使して尺を伸ばし、俳優陣には女性化したメイクを施す。「よせやぁい」「どうだ? 谷垣ぃ」といった艶台詞まで一言一句、完璧なタイミングで再現されていた。女性陣サイドの真剣な対話と交互に映し出される構成もお見事。そして、この狂乱の直後に「ゴールデンカムイ」とタイトルインする演出には、制作サイドの並々ならぬ遊び心が伝わってきた。

 山﨑演じる杉元佐一のアクションも鋭さを増している。特に網走監獄の舎房内における大立ち回りは、本作における大きな改変シーンのひとつ。原作では床下を通る隠密行動で難を逃れたが、本作では凶悪な囚人たちがひしめく舎房を正面から突破するパワフルな展開へと変更されている。その姿は、より「不死身の杉元」という異名を体現していたと言えよう。

 また、アシリパとの関係性においても細やかなアレンジが胸を打つ。原作ではキロランケ(池内)を介して渡された大切な品を、今作ではアシリパが自ら杉元の元へ駆けつけて直接手渡ししている。この描写は二人の信頼をより強調し、過酷な戦いの中を際立たせるエモーショナルなシーンとなった。

 また、圧倒的なカリスマ性と狂気を持つ鶴見中尉の存在感は白眉だ。今作では、網走監獄に収容された数百人の凶悪な囚人たちとの大乱戦が描かれるが、ここでも実写ならではの強烈なアレンジが光る。原作では短銃と刀剣だけで戦っていたが、映画では機関銃を乱射。大量虐殺をしながら高笑いするその表情は、鶴見中尉の持つ「狂人」としての側面をより一層表していた。

 実写ならではの工夫として注目したいのが、今作で初登場となった盲目の脱獄囚、都丹庵士(杉本哲太)の知覚描写である。音の反響で周囲を把握する彼の脳内を白と黒のコントラストによる波紋のような映像で表現する手法は、原作やアニメにもなかった映画オリジナルのギミックだ。静かな闇の中に一瞬だけ人物が浮かび上がる視覚効果は、観客を彼の世界へと誘っている。

 さらに、舘演じる土方歳三と、北村一輝演じる網走監獄を取り仕切る典獄・犬童四郎助の鎖デスマッチは本作の目玉の一つ。舘は完成披露試写会の場でもこのシーンについて、「台本ではセリフが長かった。これでは画がもたないだろうと相談し、セリフを分けてその間にアクションを入れる構成にした」とアイデアを反映させたことを説明。「北村君が素晴らしくて、良かったなと思いました」と絶賛している。アクション監督の和田三四郎も、舘を北村が見下す構図など「二人の良さを最大限に引き出すカッコいい画」にこだわり抜いたと言う。

 原作ファンも大満足な「映画アレンジ」をぜひ劇場でチェックしてほしい。

※アシリパの「リ」は小文字が正式表記

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