壇蜜が授賞式に来るかも!? 「マンガ大賞2026」初選出が多いノミネート作を解説

【マンガ大賞2026二次選考ノミネート作】

『妹は知っている 』(雁木万里、講談社)
『おかえり水平線』(渡部大羊、集英社)
『怪獣を解剖する』(サイトウマド、KADOKAWA)
『サンキューピッチ』(住吉九、集英社)
『邪神の弁当屋さん』(イシコ、講談社)
『「壇蜜」』(清野とおる、講談社)
『友達だった人 絹田みや作品集』(絹田みや、光文社)
『人喰いマンションと大家のメゾン』(田中空、あきま、集英社)
『本なら売るほど』(児島青、KADOKAWA)
『魔男のイチ』(宇佐崎しろ、西修、集英社)
『RIOT』(塚田ゆうた、小学館)
『路傍のフジイ』(鍋倉夫、小学館)
(五十音順)

 誰かに勧めたい漫画を、書店員や漫画好きが選ぶ「マンガ大賞2026」の二次選考ノミネート作が決定した。1月20日に公表されて12作が選ばれた。昨年ノミネートの鍋倉夫『路傍のフジイ』以外は「マンガ大賞」初ノミネートというフレッシュなラインナップ。ネットで漫画を読む時代を反映して、「少年ジャンプ+」などのWeb連載作品から選ばれる作品も目立った。ここから二次選考を経て「マンガ大賞2026」が決定する。

 『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』といったバトルアクション漫画が世界的には人気で、アニメになって大勢のファンを集めているが、「マンガ大賞2026」にノミネートされた作品では、そうしたバトルアクション漫画と言えるものは宇佐崎しろ原作、西修作画の『魔男のイチ』(集英社)くらい。あとは日常のちょっとした機微を描くものだったり、少し不思議なシチュエーションで起こる出来事を綴っていくものだったりと、静かな作品が多く選ばれた。

 雁木万里『妹は知っている』(講談社)は、冴えないシステムエンジニアに見えて実は伝説のハガキ職人という兄と、アイドルグループに所属していている妹の日常を描いたコメディ作品。普段は塩対応の妹が兄の力を借りてクイズ番組の大喜利で目立ってしまうようなドタバタぶりで笑わせる。

 渡部大洋『おかえり水平線』(集英社)は「少年ジャンプ+」での連載作品で、祖父が経営している銭湯の手伝いをしている高校生の柿内遼馬のところに、死んだ父親の隠し子だった柴崎玲臣が訪ねて来て始まる異母兄弟のストーリー。生い立ちも見た目や性格も違う2人が、兄弟としてお互いを想い合うようになる温かさに触れられる作品だ。

 サイトウマド『怪獣を解剖する』(KADOKAWA)は、”トウキョウ”と呼ばれる全長210メートルもの巨大怪獣の死骸を解剖して調査する場所に呼ばれた怪獣学者が主人公。だんだんと明らかになっていく怪獣の様子など、暴れ回る怪獣と戦う松本直也のマンガ『怪獣8号』とも、巨大な死骸をもてあますドタバタ振りを描く映画『大怪獣のあとしまつ』とも違う怪獣へのアプローチで読者を引き付けた。

 住吉九『サンキューピッチ』(集英社)も「少年ジャンプ+」連載作品。イップスで1日3球までしか全力投球できない高校球児の活躍を描くスポーツ漫画だが、体重100キロという体格を誇る監督で古典教師の阿川美奈子の濃すぎるキャラも目立って読者を笑わせている。

 イシコ『邪神の弁当屋さん』(講談社)は、戦争の原因になった女神が罰として人間の世界で暮らすようになって弁当屋を開店するというストーリー。そこに来る客たちや、周りで暮らしている人たちとの日々を通して食べることや生きることの大切さに気づかされる作品だ。

 清野とおる『「壇蜜」』(講談社)は作者が超有名芸能人だった壇蜜を結婚相手として迎えたことから始まる日々を綴った超異色のノンフィクション漫画。唐突すぎるなれ初めも驚きなら、赤羽と世田谷で離れて暮らす夫婦生活も興味をそそられるもの。どんな夫婦なんだと読んでいるうちに、いつしか2人の不思議な時空に引きずり込まれる。

 絹田みや『友達だった人 絹田みや作品集』(光文社)はSNSなどで活躍していた作者の初作品集。表題作「友達だった人」はSNSで知り合った人との表面的に見えて深く繋がっていた関係を描いて感動を誘う。現代に生きる人たちの思いをすくい上げるような作風でこれからも支持を広げていきそうだ。

 田中空原作、あきま作画の『人喰いマンションと大家のメゾン』(集英社)も「少年ジャンプ+」の連載作品。崩壊を1秒後に控えた地球に建つマンションで、永遠の時間の中を暮らす人たちがいるという不思議な設定で、『タテの国』の田中空が原作と担当していることもあってSF味に溢れている。

 児島青『本なら売るほど』(KADOKAWA)は、丁寧な絵柄で古書店を舞台に本にまつわるエピソードが綴られていくヒューマンドラマ。人それぞれに本に対する思いの深さや違いに触れられて、知らず本が好きになっていく。

 宇佐崎しろ原作、西修作画『魔男のイチ』(集英社)はノミネート作で少ない週刊少年漫画誌連載作。女性しか魔法を扱えない世界に魔法を修得してしまった少年が出現、魔女ならぬ魔男として修行をしながら世界を脅かす反人類魔法と対峙していく。イチの師匠のデスカラスが圧倒的な実力を誇る上に態度が不遜で、イチに代わって虐げられたい感覚を引き起こす。

 塚田ゆうた『RIOT』(小学館)は、海が見える穏やかな田舎町で紙の「雑誌」作りに勤しむ高校生たちの物語。最近はZINEと呼ばれる個人誌やミニコミ誌を作る人たちが増えている。そうした文化に田舎町から挑む姿から、スポーツものとも部活ものとも違った青春のパッションが浮かび上がってくる。

 鍋倉夫『路傍のフジイ』(小学館)は2年連続のノミネート。パッとしないように見える中年男の生き様を描いた作品でありながら、それが承認欲求にまみれた現代でかえって人の心をとらえて引き続き支持を集めたようだ。

 マンガ大賞のノミネート作品は、マンガ好きの選考員がひとり最大5冊を挙げてエントリー。上位10作品に絞る一次選考で、今回は94人の選考員から249作品への投票があり、同数の作品が出たため12作品が二次選考にノミネートされた。ここから選考員がすべてを読んだ上で改めて3位までを投票。で最大の得点を得た作品が栄えある「マンガ大賞2026」に選ばれる。

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