“呪いのウサギ”がすべてをかじり尽くす 韓国発の話題作がついに日本上陸

 韓国人SF作家チョン・ボラの短編集『呪いのウサギ』(関谷敦子訳、竹書房)が11月29日(土)に発売された。

 美しい破滅に導いてくれるもの

 呪いのウサギはかじってくれる。
 排泄物は話しかけてくれる。
 キツネは黄金の血を流してくれる。

 ライバル会社の策略によって自殺に追い込まれた親友。呪物を作る一族の男が復讐のために作ったウサギは、ライバル会社のすべてをかじり尽くしていく。

 哀しき復讐譚の表題作をはじめ、排泄物が意志を持ち話しかけてくる「頭」、避妊薬を飲み続けた副作用で妊娠した女性が父親候補を探す「月のもの」、パートナー・ロボットとの奇妙な関係性を描く「さようなら、愛しい人」、黄金の血を流すキツネによって大儲けした男の生涯「罠」、ビルを購入した若い夫婦が次々とトラブルに襲われる「楽しい我が家」など。

 孤独に寄りそってくれる“恐怖”と、その先に待つ美しく甘美な破滅を描いた、韓国の奇才による異色短篇集。国際ブッカー賞最終候補作。

 著者のチョン・ボラは、韓国人SF作家。ロシア語とポーランド語の現代文学作品を韓国語に翻訳しながら、主に奇想小説を執筆している。特に『呪いのウサギ』は2022年に国際ブッカー賞の最終候補作に選ばれ、2023年には全米図書賞の最終候補作となった。また短篇集『あなたのユートピア』は、2025年にフィリップ・K・ディック賞の候補作にノミネートされている。

関谷敦子
英・韓・日翻訳者。英国留学時に韓国人クラスメイトから投げかけられた言葉がきっかけで、のちに韓国語を学ぶ。字幕翻訳を中心として、出版翻訳にも携わっている。字幕『私の夫と結婚して』『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん』(Amazonプライム・ビデオ)ほか、書籍『ポン・ジュノ映画術』(河出書房新社)などがある。

■書誌情報
『呪いのウサギ』
著者:チョン・ボラ
翻訳:関谷敦子
価格:1,760円
発売日:2025年11月29日
出版社:竹書房
レーベル:竹書房文庫

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