ダンジョンで遺体を回収するお仕事……異色すぎるファンタジー漫画『死体担ぎのネム』の面白さ

 いわゆるなろう系から『葬送のフリーレン』、『ダンジョン飯』に至るまで、さまざまなファンタジー作品が生み出されている令和の漫画業界。これまで描かれることがなかった“無名の英雄たち”に光を当てた異色のファンタジー『死体担ぎのネム』に注目が集まっている。

 同作は「くらげバンチ」で選分つかむが連載している作品。今年8月にはコミックスの第1巻が刊行されたところだ。

 作品の舞台となるのは剣と魔法のファンタジー世界で、ダンジョンで遭難していた青年・ガレンが「死体担ぎ」の仕事をしている少女・ネムと出会うことから物語が動き出す。「死体担ぎ」とはダンジョンの深部など、危険な場所で命を落としたまま置き去りになっている亡骸を回収し、依頼人のもとに持ち帰ってくるという職業だ。

 資金難になった家業の店を支えるためにダンジョンに潜り、モンスターに食われた少女、親の決めた結婚に逆らって駆け落ちするもトラップルームで落命したカップルなど、作中に登場する遺体はさまざまな事情をもっている。そこから浮かび上がってくるのは切なくも温かいヒューマンドラマで、「死を弔うとはどういうことなのか」という深いテーマにも話が広がっていく。

 また一般的なファンタジー作品では広く名前の知られた英雄たちが物語の主役となるものだが、同作で描かれるのはダンジョンの攻略に失敗して散っていった無名の人々。華々しい物語の陰で見落とされてきた無名の人々の物語を拾い上げるという意味で、異色のファンタジー作品と言えるだろう。

 さらに重要なのは、「死体担ぎ」は世間では嫌われており、ほとんど“禁忌”に近い存在にされているということ。ネム自身も街に帰るたびに迫害のような扱いを受けており、依頼人からやり場のない怒りをぶつけられることすらあるのだった。

 その一方でまっすぐな性格のガレンは、ネムが理不尽な扱いを受けていることに耐えられず、代わりに感情を爆発させて守ろうとする。この2人の凸凹でありながら微笑ましいバディ関係も、同作の大きな見どころとなっている。

新たなパーティーメンバーも登場! 今後の注目ポイントは?

 異色のストーリーが展開される同作だが、ダンジョン探索やモンスター討伐といった王道の要素もしっかり描写されている。ネムとガレンは凶暴なモンスターを倒したり、危険なトラップを回避したりしながら、命がけで依頼を達成していく。

 ファンタジー作品ならではのスリルあふれる展開と、切ないヒューマンドラマを両立させているという意味では、『葬送のフリーレン』に近い面白さがあると言ってもいいかもしれない。

 なお単行本にまだ収録されていない連載分のエピソードでは、薬師のシディという個性豊かな新キャラクターが登場する展開が描かれている。パーティーメンバーが1人増えたことで、今後はより一層冒険の幅が広がっていきそうだ。

 また、ガレンの個人的な情報については今のところほとんど触れられていないが、 “闇”を感じさせる過去も仄めかされている。この先で人物像が掘り下げられることに期待したい。

 今までにない観点からファンタジー世界を描き出している『死体担ぎのネム』。まだ物語は始まったばかりなので、さらに面白さが加速していくはずだ。ここからどんな展開に突き進むのか、コミック版で一気に読むのがおすすめだ。

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