【漫画】少女2人、ジュラ紀にタイムスリップ! ロマン溢れる『6億年の博物旅』

 緑生い茂る森のなか、樹上テントに揺られ快適に寝坊する少女。そこは未知の生物が悠々と生存している、ジュラ紀の北米で……。

 “博物学をやり直す”をテーマにした、2人の少女が主人公の漫画がXにアップされた。本作は「まんがタイムきららフォワード」にてみなぱか氏(@AlpacaOkinawa)が連載する、『6億年の博物旅』の第一話だ。

 今回はテーマ誕生の経緯や気に入っているポイントについて、みなぱか氏に話を聞いた。(青木圭介)

続きを読むには画像をクリック

『6億年の博物旅』(みなぱか/芳文社)

ーー本作の発表に至った経緯を教えてください。

みなぱか:本作は私が初めて描いた作品で、描き終えてから「まんがタイムきららフォワード」にオンラインの持ち込みをしたんです。そこで編集さんが担当につき、「この内容だったら読切ではなく連載の方向で考えた方がいい」という話になりました。そしてそのまま連載に向けて動き始め、掲載に至ったという経緯です。

ーー“19世紀の博物学をやり直す”というテーマはどのように誕生しましたか?

みなぱか:元々私自身生物が好きで、インドネシアのコモド諸島に行ってコモドオオトカゲを見たり、台湾でコブラを捕まえたりと、フィールドワークもしていました。ですので生物のフィールドワークを主軸にした作品が作れたら楽しいだろうなという構想があったんです。一方で、現代がテーマだと少し作品自体が地味になりそうだなとも思っていました。その時に出てきたのが「6億年を旅する」というアイデアでした。

 博物学という学問は生物学や鉱物学、地質学という風に細分化され、今や博物学という言葉の印象には古めかしさすらあります。しかしダーウィンやウォレス(ともに19世紀の博物学者)といった、世界の多くが未知で占められていた時代の冒険譚には色褪せない魅力があります。

 “最新の古生物研究の知見を反映した描写で、19世紀の博物学をやり直す冒険をする“―このテーマであれば自分の経験も活かせて、漫画としてもロマンがあり面白いモノになると感じました。

ーーみなぱか氏自身が本作のなかで気に入っているポイントは?

みなぱか:恐竜のディプロドクスが登場するシーンなんかも迫力があって好きなんですけど、私は意外と最初のシーンが気に入っています。冒頭数ページの、生物がたくさん出てくるシーンですね。本作はハラハラドキドキの恐竜パニック作品という雰囲気ではなく、各時代の土地を探索するフィールドワークを楽しんでもらえる作品にしたいと考えています。当たり前ですが、各時代には巨大で迫力のある生物だけでなく、さまざまな生物が暮らしていたはずです。そういう部分にロマンを感じる人にとっては、冒頭の数ページは良い導入になっているんじゃないかと思っています。

 またさまざまな生物を背景に、主人公が「私たちがしようとしてるのは、6億年の博物旅なんだからさ」と語る場面も好きです。第一話は漫画として超面白くというより、作品の魅力をわかってもらうプロローグとして描きました。冒頭の数ページと主人公の語りで、それが伝わる第一話になっていれば嬉しいです。

ーーみなぱか氏が漫画を描き始めたきっかけを教えてください。

みなぱか:大学を卒業してから就職活動が上手くいかず、手に職をつけたいと思って陶芸の修行をしていたんですが、いざ独立して本腰を入れて活動しようと思ったタイミングで、子供が生まれまして。陶芸はスケジュールの調整がだいぶ繊細で、臨機応変な動きが必要な子育てと両立するのは難しかったんです。

 その後は生物の模型を作る仕事を始め、ありがたいことに博物館や企業様から発注を受け、また個人様向けにも販売しながら生活をしていました。でも将来のことを考えると模型の販売と陶芸だけで今後ずっとやっていくのは難しいなと思い、もう1つ何か収入源がほしいなと感じたんです。そこで元々「きらら」系の作品が好きだったので、漫画を描いてみようと思い立ちました。

ーー先ほども少し伺いましたが、初制作の作品が連載化はすごいですね。

みなぱか:運が良かったのだと思います。ただ、恐竜や古生物は人気のジャンルで、日本初の恐竜学部が誕生するなど※さらに近年活気が高まっているように感じます。一方で恐竜や古生物にフォーカスした漫画の供給は、とても少なかったんです。なのでこれはブルー・オーシャンではないかという狙いはありました。結果としてパニック無しの古生物モノという割と攻めた企画になったのですが……。拾ってくれた編集者様と出版者様には感謝しています。
※2025年4月、福井県立大学に恐竜学部が創設されている。

ーー最後に、本作をどのような作品にしたいですか?

みなぱか:本作を描くにあたって自分の知識だけでは描き切ることはできないと分かっていたので、古生物学者の泉賢太郎先生(千葉大学准教授)に監修していただいています。「女の子×古生物」というキャッチ―な組み合わせでありながら、きちんとした描写をして読者の好奇心をくすぐるような作品にしたいです。

 一方でさっき言っていたことと矛盾するようですが、難しく考えずにサラッと読んでも面白い作品にできればと思っています。「きらら」はそういう意味では懐の深い雑誌なので、遊び心満載の連載にしていけたら嬉しいです。

関連記事