『アオアシ』聖地へ、連れて行ってやるーー愛媛在住ライターが最終40巻刊行記念にゆかりの地を巡る
多くの読者に惜しまれながらも完結し、2025年8月29日についに最終40巻が刊行されたJリーグユースを舞台に描いたサッカー漫画『アオアシ』(小林有吾/小学館)。
主人公のサッカー少年、青井葦人(あおいあしと)がJリーグユース屈指の育成力を誇る東京シティ・エスペリオンFCユース監督の福田達也(ふくだたつや)にその稀有な才能を見出されることから始まる物語だ。
サッカーの本質、キャラクターの個性、そしてサッカーそのものの魅力をさらに1段深く味わうことができる傑作として人気の本作だが、作中には作者である小林有吾が今も在住している愛媛県の光景が至るところに登場している。
本記事を『アオアシ』聖地巡礼のガイドマップとしても活用できるように愛媛県在住の筆者が作中に描かれたシーンの解説と合わせて各地を紹介していきたい。
※以下紹介の中で作中のシーンに言及する為、ご了承の上読み進めて下さい。
『アオアシ』聖地の中の聖地「道の駅ふたみ」
まずは聖地巡礼の際には是非とも訪れておきたいのが愛媛県伊予市双海町にあるふたみシーサイド公園「道の駅ふたみ」だ。最終話の1話前となる第409話で、葦人と一条花の仲睦まじいシーンが描かれる。葦人が花を支えながら鐘を鳴らすシーンが印象深いが、実際にそのモデルと思われる場所が存在する。
「恋人の聖地」でもあるふたみシーサイド公園。葦人と花のように肩車しながら鐘を鳴らしてみたい衝動に駆られることだろう。施設内にはからあげやクレープのほか、地元の名産品も販売されているので、ゆったりと時間を過ごすことが出来る。
道の駅ふたみにはアニメ『アオアシ』の特大パネルや『アオアシ』仕様の自動販売機も設置されている。ファンなら思わずニヤニヤしてしまうことは間違いないだろう。聖地巡礼の際は一番に訪れて欲しいスポットだ。
■ふたみシーサイド公園:愛媛県伊予市双海町高岸甲2326
多くの観光客に愛される絶景の駅
『アオアシ』3巻で描かれる、東京に旅立つ葦人をサッカー部の面々がサプライズで先回りして見送った、感動的な別れのシーンに登場するのが下灘駅だ。日本一海が近い駅として、映画やCMのロケ地にも選ばれたことのある県内有数の観光スポットでもある。
夕暮れ時には空と海が茜色に染まる「マジックアワー」を堪能することができる。その美しい光景を視界に映しながら、帰りの電車で母親からの手紙を読み返すまでが聖地巡礼における1セットだ。冒頭で紹介したふたみシーサイド公園から車で7分程度の距離の為、こちらも併せて訪問しておきたいところ。
■下灘駅:愛媛県伊予市双海町大久保
車で県外から愛媛までの旅行を考えている方には、石鎚山サービスエリア(上り)を休憩場所として選んでもらいたい。夏目漱石の小説「坊っちゃん」の登場人物、坊っちゃんとマドンナの格好をした葦人と花に出会うことができる。ふとしたところでばったり『アオアシ』に遭遇できるのも愛媛県ならではの魅力だろう。
■石鎚山サービスエリア(上り):愛媛県西条市小松町新屋敷乙22-20
様々なシーンが蘇る〜松山中央公園
愛媛県武道館や坊ちゃんスタジアムなど、愛媛のスポーツ施設が集う松山中央公園。作中でも様々なシーンの素材として描かれている。
例えば、エスペリオンタウンバス乗り場の元となった場所も松山中央公園にある。『アオアシ』読者なら訪れた瞬間に作中の光景と瞬時にリンクするくらいにはお馴染みの風景だ。青く抜ける空が心地よい空間だ。景色とセットで楽しみたいところだ。
『アオアシ』第216話で葦人が阿久津を追いかけ声を掛けるシーンの橋の上。その元となった場所も中央公園の一角にある。橋の上で2人のやりとりを真似してみるのも一興だ。
さらには作中で葦人達エスペリオンユースに立ちはだかる青森星蘭のエース、北野蓮が高校1年生にしてプロ内定を得たJチームFC鹿島のクラブハウスのモデルとなった建物も中央公園の敷地内で見ることが出来る。かなりマニアックな聖地巡礼だが、それはそれでファンとしてはたまらないだろう。
■松山中央公園:愛媛県松山市市坪西町625-1
エスペリオンユースの一員になった気持ちで食を満喫
『フェルマーの料理』をはじめ、料理を題材にした作品でも知られる小林有吾。『アオアシ』でも度々登場する食のシーンに思わず「美味しそう…」と唸った読者も多いことだろう。本作では実在するお店をモデルに描かれたシーンもある為、こちらも訪れていただきたいところだ。
まずは24巻に登場する、エスペリオンユースの3年生の回想シーンで描かれるお好み焼き屋「武蔵野一番」のモデルになっている「お好み焼きのむら」だ。
店名が異なる以外はほぼ看板がそのまま登場している為、愛媛県在住の読者なら気付いた方も一定数いたのではないだろうか。
地元でも人気のお好み焼き店であり、定番の関西風・広島風は勿論、愛媛では珍しいもんじゃ焼きも食べることができる。ちなみにもんじゃは塩味でご賞味いただくのがオススメだ。店内にはお好み焼きを焼くアシトが描かれた小林有吾直筆のサインが拝めるので訪れた際には必見だ。エスペリオンユースの一員になった気分で平らげていただきたい。
■お好み焼き のむら:愛媛県伊予郡松前町東古泉475
続いては東京シティエスペリオンユースの面々御用達の定食屋、日の丸食堂のモデルとなっているのが昭和25年創業、日の出食堂だ。
昔ながらの懐かしい雰囲気が香る食堂。昭和のテイストがなんとも心地よい。様々なメニューに目移りしてしまうが、ここは小林有吾もよく食べているという、創業当時から存在する看板メニュー「中華そば」を楽しんでおくべきだろう。海産物で出汁をとったほのかな甘味が光る珠玉の一品だ。
■日の出食堂:愛媛県松山市古三津6-1-12
まるで『アオアシ』の世界に入り込んだような体験ができる聖地巡礼の旅。第1話と最終話で福田の口から放たれた全く同じセリフ「世界へ、連れて行ってやる」の言葉の如く作品世界に没入できることだろう。
最終巻刊行を機に、葦人が生まれ育った愛媛を訪れて見て欲しい。