7人の育児中パパ作家による、7本の小説アンソロジー『パパたちの肖像』発売
小説アンソロジー『パパたちの肖像』(光文社)が8月18日に発売された。
「イクメン」という言葉が死語になり、当たり前に家事育児を行う令和のパパたち。2024年の男性の育休取得割合は40%を超え、過去最高となったという。産後パパ育休制度なども始まり、変化を続けているパパを取り巻く環境だが、その心の裡が語られることはまだ少ないのが現状。そんな令和パパたちがどんな思いで日々を送っているのかーー。
本書では実際に育児中の7名のパパ作家たちが物語を執筆。7作品を収録した1冊となっている。
同じ会社で働く妻が出世したことにより、閑職に追いやられた夫。娘の小学校のPTA活動に参加するも、うまくなじめず葛藤を抱えるパパの姿を描いた、外山薫「ダディトラック」。
夜間の授乳で細切れ睡眠に苦しむ妻を見て、自分も授乳ができたらいいのに……と思い悩む夫。妻と比べ、なかなか親になりきれない自分にふがいない思いを抱くパパの迷走ぶりがおかしくも切ない、行成薫「俺の乳首からおっぱいは出ない」。
ふとしたきっかけで、老いた母親の部屋で見つけた自分の保育園時代の「連絡帳」。そこにはいないはずの「父」の筆跡があり、数十年越しに自らの幼年期を振り返る、岩井圭也「連絡帳の父」。
息子が愛してやまないトミカのひとつが紛失してしまい、どこを探しても見つからない。多くの子育て層が経験する状況を、さすがのミステリーに仕立ててくれた、似鳥鶏「世界で一番ありふれた消失」。
息子が地方の国立大学に進学することになり、二人でアパート探しの旅に出る父子。久しぶりに向き合った息子の思わぬ成長に、胸がいっぱいになる、石持浅海「息子の進学」。
不器用な俺は、娘の髪をうまく結べない。保育園から頼まれた夏祭りの景品作りもうまくできず、父親に向いていないなと凹むパパを、思わず応援したくなる、河邉徹「髪を結ぶ」。
共働きのハードさに疲れ、妻が専業主婦になることを選択した夫婦。同僚との飲み会でそのことを激しく非難されて、傷つくパパ。それぞれの家庭の事情があるのだと考えさせられる、カツセマサヒコ「そういう家族がそこにある」。以上7作品が収録される。
8月22日発売の「小説宝石9月号」(小社刊)では、岩井圭也×行成薫×河邉徹、外山薫×似鳥鶏×カツセマサヒコによるパパ作家座談会も掲載。令和パパたちの赤裸々な心の裡がさらに語られる。
■書誌情報
『パパたちの肖像』
価格:2,000円(税抜)
発売日:2025年8月18日
出版社:光文社