夏の定番「そうめん」なぜ今さらブレイク!? 豊富なアレンジで話題『今日のそうめん』ヒットの理由
夏の定番メニュー、そうめんのアレンジレシピを紹介した『今日のそうめん 365日そうめんを食べるわたしのレシピノート』(日坂春奈・誠文堂新光社)が売れている。6月5日の発売後にすぐ重版となり、7月23日現在、Rakutenブックスの料理部門で1位、Amazonの料理の基礎カテゴリーで2位。7月22日放送の『マツコの知らない世界』(TBS系)では著者の日坂春奈さんが出演してそうめんの魅力を紹介し、話題になった。
そうめんは日本最古の麺とされており、おなじみといえばおなじみすぎる食材だ。キッチンにはたいていあり、夏ともなれば食べる機会も多い。そのアレンジレシピが、なぜ今、ここまで支持されているのか? その背景を、本書の編集を担当した誠文堂新光社編集部の若松香織さんと、フリー編集者の吉川愛歩さんに聞いてみた。
吉川さんが理由のひとつとしてあげたのが、昨今の米価格の高騰だ。備蓄米の流通により平均価格が少し下がったが、今でも銘柄米は5キロで4000円ほどと高止まり状態。そうめんなどの乾麺も物価高の影響で値上げはしたが、米ほどではないため、家庭の主婦にとってありがたい存在になっている。そんな事情から、麺料理レシピのフェアを開催する書店も増えているようだ。日本の食料事情が、今回のヒットを後押ししたのだ。
ちなみに本書の企画がスタートしたのは、昨年の1月。その頃にはまだ、現在の米価格高騰は起きておらず、想定外の追い風が吹いたようだ。
もちろん、そうめん自体が持つポテンシャルも見逃せない。吉川さんは企画のスタート時に、料理が楽しくなるような本にしたいという思いがあったと語る。『今日のそうめん 365日そうめんを食べるわたしのレシピノート』は、そのタイトル通りに温かいものから冷たいものまで、季節ごとに楽しめるレシピが紹介されている。そうめんはどんな味付けにもなじむため、和洋中、さらには甘いものまで、驚くほどバリエーションは多様だ。
「ミートソースつけめん」(メイン画像)というつけて食べる形式のアレンジ版や、「じゃがバタコーン鍋焼き」などにゅうめんのアレンジ版。さらに「そうめん牡蠣フライ」など、そうめんを衣として活用する技や、そうめんを揚げてチョコレートをまとわせた「そうめんチョコスティック」など、見ているだけで楽しくなってくる。
さらにそうめんは茹で時間が他の麺に比べて短いため、手軽に作ることができる。これは夏の灼熱のキッチンに立つ主婦にとってはうれしい。毎日、楽しみながら料理に取り組むことができる食材だったというのも、支持された理由だろう。
手軽さは判型もそうだ。A5変形の本書は224ページとけっこうなボリュームがありながら、キッチンに置いてあっても邪魔にならないコンパクトさがある。レシピ本は頻繁に開くことが多いため、この手軽感があるサイズも大きなセールスポイントだ。
一方、若松さんは本書の魅力を「考えすぎたりひねったりせずにパンッと出した」ところだという。確かにそうめんだけで365種類のレシピをズラッと並べるのは、シンプルといえばシンプル。だが、これほどわかりやすく、そして伝わりやすい作りはそうそうない。種類が多すぎて、編集中に混乱することもあったようだが……。
この膨大な量は日坂さんだからこそ実現したものだという。熱いそうめん愛を持つ日坂さんは、出版の話が決まる前から、数多くのそうめんレシピを考案してはSNSにあげ続けていて、そのレシピは1600以上あるという。そうめんのレシピを365種類出してくださいと、料理研究家にお願いしたところで断られるのがオチだが、日坂さんならば可能。そうめんを愛し続けてきた日坂さんがいたからこそ、本書の企画が実現し、ここまでのヒットにつながったのだ。
また、そうめんを求めて全国を飛び回っている日坂さんは、製麺所や組合などそうめん関連の業界とのつながりも深い。本書の発売時にはSNSなどで各所から応援の声が相次ぎ、認知度をあげることにつながったという。
米価格の高騰という時流的な要因もあるが、なにより日坂さんや若松さん、吉川さんのそうめんに対する愛が、本書が支持された要因のようだ。夏の定番メニューと思われていたそうめんだが、季節を超えてその人気は続くかもしれない。
■書誌情報
『今日の そうめん: 365日そうめんを食べるわたしのレシピノート』
著者:日坂春奈
価格:1,650円
発売日:2025年6月5日
出版社:誠文堂新光社