【漫画】『お疲れリーマンとかしこいぬ』を読む

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

ゆづきち：きっかけは、担当編集さんから「犬を描きませんか？」とご依頼をいただいたことです。

　ご依頼をいただいた当時は仕事量が多かったので、新規のお仕事はお断りしていました。しかしドッグトレーナーをしていた経験から犬をテーマにした漫画を描きたいなとずっと思っていて、ご縁かなと感じてお引き受けしました。

ーー本作は、疲弊したサラリーマンが田舎で犬に触れ、温かい感情を得ていくストーリーが魅力的でした。ゆづきち氏も、実際に山で犬と暮らされているんですよね。

ゆづきち： そうですね。35年ローンで山に一軒家を建てて、サモエドと2人で暮らしています。エッセイ（※）も描きました。
（※）エッセイ『おひとり様が大型犬と暮らせる家を建てたはなし』は「COMICポラリス」に掲載中（https://comic-polaris.jp/ohitorisama）

ーー山で暮らそうと思った経緯は？

ゆづきち：私自身すごく1人が好きなんです。そして犬、特に大型犬が好きでした。でも賃貸だと、なかなか一人暮らし用で大型犬と暮らせる家ってないんですよね。条件に合う家を見つけるのも難しく、「じゃあ建てよう！」と思いました。

　もちろん山なので不便なことも多いですけど、やっぱり今が人生で1番幸せです。

ーー素敵ですね。本作の、ほとんどセリフがない主人公と犬の散歩シーンからも、犬と一緒に豊かな自然を存分に味わう心地よさが伝わってきました。

ゆづきち：散歩中に、自転車や子供とすれ違うコマがあるページですね。実はこのページ最初はなかったんですが、読んでいる方にもしっかりと空気感が伝わるかなと思い付け足しました。なので、作品から場所や犬と暮らす温かさを、感じてもらえていたら嬉しいなと思います。

ーーほかにも山で犬と暮らしている経験が、本作に活きた点はありますか？

ゆづきち：作中の描写は田舎で犬と暮らす様子がメインですが、背景とかは私がいつも散歩しているコースをモデルにしているんです。なので、写真が撮り放題なのは非常に助かりました。実際に散歩コースの近くには川も流れていて、熊が出ないような日はよく行っています。

ーー反対に、経験があるからこそ描きづらかった部分は？

ゆづきち：そうですね……。基本的にはないんですけど、作中にシェパードが出てきますよね。実際のシェパードは、毛が硬めの犬種なんです。

　そのイメージで描いていたので、最初できあがった原稿を見た担当さんに「毛が硬いですね」と言われてしまいました。次からは柔らかく描きますねということで落ち着きました。

ーー現在はサモエドと一緒に暮らしているなかで、犬種にシェパードを選んだ理由は何ですか？

ゆづきち：私は以前ドッグトレーナーをしていたんですが、その頃はメスのシェパードと一緒に暮らしていたんです。

　犬種について考えていたときに、「シェパードってすごく可愛いんだよ」ということも伝えたくて、ある意味親バカ感覚で決めました。実際のシェパードもすごく賢くて、楽しみながら訓練をしてくれるような犬種なんです。

ーー作品全体を通して、工夫したポイントを教えてください。

ゆづきち：とにかく、とにかく犬を可愛く描きたいと思いながら作品を描いていたので、その辺りが伝わってくれていたら嬉しいなと思います。

　あとは、犬の息遣いが読んでいる方に伝わればいいなと、リアルに描けるよう心がけました。

ーー最後に、今後どのような漫画を描きたいですか？

ゆづきち：最近暗いニュースが多いので、ちょっとでも優しい気持ちになる作品を作りたいですね。

　読んでいる間だけでも癒されるような、頑張っている気持ちが報われるような、そんな漫画を描いていきたいです。

©ゆづきち／COMICポラリス

著者情報
◼︎ゆづきち
【代表作】
「あと3秒待ってやる！傲慢王子は元婚約者に謝罪を要求します」（パルプライド）
「転生聖女の異世界スローライフ」作画：ゆづきち　原作：三沢ケイ（KADOKAWA）
【X】：https://x.com/yudukitirou

作品情報
タイトル：『お疲れリーマンとかしこいぬ』
【あらすじ】

賢い犬に癒される
犬×田舎暮らし
日々の仕事に追われすぎて疲れきってしまった朝倉秀人は、リフレッシュ休暇で田舎生活満喫中。
自然豊かな環境、昔ながらの日本家屋。そして、なにより犬が居る?　それって最高！ 
とっても賢いわんこのシェパード・ルルの人間に寄り添う姿に癒され、元気をもらう。
わんこと田舎くらしストーリー！

掲載誌：「COMICポラリス」https://comic-polaris.jp/kashikoinu/