人気ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』原作は少女漫画誌作品 ミステリ好きが薦める人気の少女漫画といえば?

■『BANANA FISH』

吉田 秋生、由木デザイン『BANANA FISH OFFICIAL GUIDEBOOK』(小学館)

  『別冊少女コミック』(現・『ベツコミ』)に1985年〜1994年まで連載されていたかなりの長寿作品。連載終了から14年の時を経て2018年にアニメにもなっている。

  1980年代のニューヨークを舞台に、謎の言葉「BANANA FISH」を巡って物語が展開されるサスペンスである。本作は登場人物の男性率が高く、女性が少ない。女性キャラクターが少ないので、当然ながら恋愛要素は限りなく希薄である。あえて言うならアッシュと英二の関係が友情以上恋愛未満と言ったところだろうか。こういった描写を見ると思うのだが、男性作者の視点から見た男同士の友情と女性作者の視点から見た男同士の友情は違うようだ。

 『結界師』、『BIRDMEN』の田辺イエロウ氏や、『鋼の錬金術師』、『銀の匙 Silver Spoon』の荒川弘氏など、少年漫画誌を主戦場とする女性作家には、作風からいい意味でフェミニンさを感じさせない人がいるが、女性の書いた「少女漫画らしくない少女漫画」にはそれらとは違った魅力がまたあると思う。

■『夏目友人帳』

緑川ゆき『夏目友人帳 1 』(白泉社)

   『LaLa』に2003年から連載されている長寿作品。何度もアニメになっているため、アニメ好きにもお馴染みだろう。

  妖(あやかし、妖怪)の姿が見える、霊能力者の少年を主人公に人間と妖怪の関係を描いたドラマである。一話完結、または一つのエピソードが数話で完結する形式をとっており、主人公の夏目貴志より毎話登場する妖怪たちとその関係者たちが物語の主人公と言った趣になっている。レギュラー級のキャラクターに女性キャラクターが殆どいないため、恋愛要素は希薄。女性の作者が書くと、こういった雰囲気になりがちだが夏目と夏目の友人の田沼の関係に、仄かにBLの臭いを嗅ぎつける読者もいるようだ。『BANANA FISH』もそうだが、男性作者の目から見た男性同士の友情と、女性の作者から見た男性同士の友情は違って見えるのだろう。筆者は男だが、何を隠そう筆者も本作のファンである。他にも熱心に読んでいる男性の読者は少なくないのではないだろうか。

■『ミステリと言う勿れ』

田村由美『ミステリと言う勿れ(1)』 (小学館)

 『月刊フラワーズ』に2016年より連載中。本作もかなりの長寿作品である。

  「言う勿れ」などと銘打たれているがとんでもない。かなり本格的なミステリーである。主人公の久能整はただの大学生だが、知識・洞察力に優れており、巻き込まれたり依頼されたり何かと事件に関わって探偵役として振舞う。レギュラーキャラクターに若い女性キャラクターのライカが登場するが、整とライカの関係に恋愛の臭いは全くしない。テレビドラマでは、原作だと警察関係者の一人に過ぎなかった風呂光刑事がレギュラーキャラクターに昇格しており、仄かに整に恋愛感情を抱いているような描写があったが、テレビドラマの完全なオリジナルである。

  少女漫画でありながら恋愛要素がほぼ皆無なのは本作の魅力の一つであり、原作ファンには拒否反応を起こした人もいたかもしれない。テレビドラマに引っ張られたのか、放送終了後に連載されたエピソードで、風呂光刑事が整と組んで事件の捜査に取り組むものがある。『ミステリと言う勿れ』はテレビドラマの放送終了後、映画にもなったが新しい事件の発生を描いて終わったので、今後も映像化されるのだろう。

  何を隠そう筆者もファンで、新刊が出るたびに買っている。

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