仏ギャグに宗教用語Tシャツ……思わずツッコミたくなる『聖☆おにいさん』のシュールすぎるキャラ設定
発行部数は1,700万部超え、2013年に劇場アニメ、2018年には実写ドラマ版も放送されたヒット漫画「聖☆おにいさん」。 2024年12月20日(金)から公開の実写映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』にちなんで、本稿では原作版のキャラ設定のユニークなポイントを紹介したい。
趣味は座禅と読経、額を押されると痛いなど、ブッタの設定が細かすぎる!
本作のおもしろポイントとして欠かせないのが、主人公たちのキャラ設定やギャグの随所に、史実や信仰をデフォルメした内容が盛り込まれている点だ。特に、ブッタのキャラ設定の細かさはすごい。
例えば、第1話冒頭だ。休日のお昼寝タイム、布団に横になったブッタに大量の鳥たちが群がってくる。すかさず「大丈夫!今日はコレ 涅槃とかじゃないから」と鳥たちを一蹴。「ほっとけ!」というボケをかます。ちなみに、この1話目でブッタが着用していたのは仏教の開祖である釈迦を意味する“シッダールタ”という言葉が描かれたTシャツだった。ちなみに「涅槃」とは、悟りの境地を意味する言葉で、同時に釈迦が亡くなることを「涅槃に入る」とも言うため、ブッタに群がった鳥たちは、彼の体制とTシャツの文字を見て、「涅槃かな?」と勘違いした、というわけだ。
また、作中ブッタはたびたび人間に額の白毫(仏像の眉間に描かれる右巻きの螺旋状の白い毛)を押されて痛がっており、さらにそこから光を放ったりする描写も登場する。実際の仏像にも、白毫相(びゃくごうそう)という、伸ばすと一丈五尺(約4.5メートル)にもなる右巻きの白毛があるのだが、仏がここから光を放世界を照らすことで、悩み苦しむ人間を救う、と言われているのだ。
その他、趣味で「座禅」と「読経」をやると後光が刺す、悟りや怒りの感情があると目や頭が光るなど、細かいながらも絶妙に実際の仏教を意識した設定やギャグが満載なのも本作ならではだ。
「ニルヴァーナ」「ほけきょう」など、宗教用語が書かれたTシャツにも注目
バカンス中のブッタとイエスは、当然のことながら下界で身分をひた隠しにしている。しかし、やはり自分たちが特別な存在であることを匂わせたいのか、それとも家計節約のためなのか、上野のアメ横などで発売していそうな日本語Tシャツをよく着用している(ちなみにその3割はブッタお手製らしい)。このTシャツに書かれている文言が、毎回仏教やキリスト教にまつわる専門用語なのである。
例えば、ブッタはコミック1話で前述の「シッダールタ」、3話では、修行中の釈迦に乳粥を供養して命を救い、悟りを開くきっかけを作ったとされるインド人女性「スジャータ」の名が書かれたTシャツを着ていた。その他にも「ほけきょう」や「バラモン」など、普段あまり見ないような仏教用語、ブッタ関連のキーワードが書かれたTシャツが作中に登場する。
イエスが着用するTシャツの文言はもっとマニアックだ。イエス生誕の目撃者として新約聖書に登場する「東方三博士」や、5話の在宅中のエピソードでは、大胆にも「父と私と精霊」という言葉が書かれたTシャツを着用。ただ、あまりにも直球すぎたのか、在宅中不意打ちで訪問してきた大家さんにもTシャツの文字に関しては一切ツッコまれずに物語が進行する。
それ以外のエピソードでも、浅草に行ったり神社の祭りに参加したりと、かなりの頻度で人通りの多い場所に遊びにいくのだが、独特なルックスとあからさまな宗教用語Tシャツ姿がかえってカモフラージュになるのか、ブッタもイエスもまったく身バレせずに物語はゆるく進む。
神仏が、自らの宗教用語の書かれた日本語Tシャツを着用するなんて、まさに「木を隠すなら森の中」だが、その文言が、毎話のエピソードと絶妙に関連のある用語になっているのもニクイ。和洋折衷の神仏が登場するコメディ漫画『聖☆おにいさん』。こうした作中のキャラクターたちのファッションや設定に注目してみると、より作品のシュールさが楽しめるのかもしれない。