『呪術廻戦』主人公は伏黒の予定だった? 完結した今だからこそ振り返りたい“裏話”
主人公は虎杖ではなく伏黒の予定だった?
『呪術廻戦』の連載が始まる前には、連載会議で不採用となったネームが存在した。いわばプロトタイプにあたるその物語は『呪術匝戦』(じゅじゅつそうせん)という題名で、「芥見下々『呪術廻戦』展」にて第1話から第3話までの内容が明かされている。
『呪術匝戦』の設定は『呪術廻戦』とある程度共通しているが、いくつか大きな違いもあり、たとえば主人公は虎杖悠仁ではなく伏黒恵にあたる人物の方だった。彼の姉・津美紀は「怪病」という謎の病におかされていたが、彼自身も強力な呪いに身体を乗っ取られてしまい、そこに五条のような最強の呪術師が駆け付ける……といった流れだ。
また本編では終盤に描かれた「死滅回游」が、ストーリーの冒頭に来るように構成されているのも大きな相違点。ここでは七海建人の原型と思われる人物が、敵キャラクターとして登場する構想だったようだ。
その一方、『東京都立呪術高等専門学校』については、『呪術廻戦 公式ファンブック』にて興味深いエピソードが語られていた。同作は、初代担当編集から学園モノを描いてみるように勧められたことが執筆のきっかけだったが、そこで特級過呪怨霊・祈本里香の設定に関して疑問を呈され、誰にでも伝わるような「織田信長的なもの」にしてはどうかと提案されたそうだ。
芥見自身はこの提案を受け入れるつもりはなかったようだが、結果としてそのまま編集部の会議に通ったため、設定を変えることなく済んだという。
そのほか『呪術廻戦』の作中には、作者である芥見のプライベートな部分とつながるような要素も多い。虎杖は幼少期を岩手で過ごし、その後仙台へと移ったという設定だが、これは岩手出身で小学生の時に仙台に引っ越したという芥見の経歴と重なる。
また『呪術廻戦 公式ファンブック』によると、東堂葵はレスリングで国体に出たという学生時代の先輩がモデルになっており、その人物から聞いた話が本編にも反映されているという。
芥見の才能や個性、生き様などが詰め込まれている『呪術廻戦』。『週刊少年ジャンプ』での連載は完結したが、単行本やアニメ版はまだ続いているので、その物語を最後までしっかり見届けたい。