『巨人の星』『あぶさん』……懐かしの野球漫画、実名で登場したプロ野球選手といえば?

  プロ野球は今年、90周年を迎えた。1934年に大日本東京倶楽部、現在の東京読売巨人軍が発足し、翌年に大阪野球倶楽部(阪神タイガース)など、続々とチームが誕生し、日本職業野球連盟がスタート。これがプロ野球の始まりである。

  今年90周年を迎えたプロ野球だが、その人気は健在。昨今は北海道日本ハムファイターズのエスコンフィールド北海道のように「野球以外でも楽しめる要素」を各球団が取り入れるようになり、「野球が詳しくない人」も球場に足を運んでいるようだ。そんなプロ野球は、漫画にもたびたび登場。物語の世界観に合わせた人物像が描かれた。そこで本稿では「漫画に実名で登場したプロ野球」を取り上げてみたい。

『巨人の星』川上哲治・王貞治・長嶋茂雄ら巨人選手 

  梶原一騎原作、不滅の野球漫画『巨人の星』。1969年から1971年まで『週刊少年マガジン』で連載され、大ヒット漫画になった。この漫画は昭和の時代ということもあり、登場するプロ野球選手はすべて実名。1970年代のプロ野球選手が総登場している。

  登場したプロ野球選手のなかで物語のキーマンとして描かれたのが、川上哲治監督だ。巨人の監督として登場し、飛雄馬の巨人入りに尽力。勝利を追及する厳しい指揮官として描かれた。

  また、飛雄馬の父・星一徹とは戦前、前後の巨人軍で同僚だったという設定。内野手の一徹が太平洋戦争で痛めたカバーをするため、打者走者の顔付近めがけて投げ、そこからブーメランのように曲がる魔送球を開発。「感づかれないようにたまにランナーにぶつける」と発言したところ、これを選手だった川上が「巨人軍にふさわしくない」と否定。一徹も愚かさに気が付き、失意のまま巨人を退団するという因縁を持っていた。

  当時の巨人を支えた長嶋茂雄氏と王貞治氏も物語に登場。また、金田正一氏も飛雄馬の良き理解者として、大リーグボール開発のヒントを与えている。

『がんばれタブチくん』田淵幸一ら西武の選手

  いしいひさいち原作の『がんばれタブチくん』。西武ライオンズの田淵幸一氏が主人公のギャグ漫画である。この作品はアニメ映画化され、300万を動員。タブチの声は西田敏行が担当し、そのほかにも肝付兼太、内海賢二、羽佐間道夫、納谷悟朗、八奈見乗児、伊武雅刀など、豪華声優陣が総登場。この作品も『巨人の星』同様、全選手実名の作品だ。

 『がんばれタブチくん』の内容は丸々と太ったタブチくんが、さまざまな騒動を起こすというもの。実際の田淵幸一氏はそこまで太ってはおらず、阪神タイガースと西武ライオンズで1532安打、474本塁打を放った大打者だが、この作品ではギャグメーカーとして描かれた。
舞台は1980年代前半の西武ライオンズで、根本陸夫監督や野村克也氏、松沼博久氏ら選手が実名で総登場。また、阪急ブレーブスの福本豊氏や山田久志氏など、パ・リーグの猛者も出演した。

  なお田淵氏は現在のいしいとは会ったことがないそうで、勝手に名前が使われていたそう。それでも同氏は漫画や映画のおかげで知名度が上がったこともあり、訴訟などは起こしていない。それどころか、「漫画にしてくれて感謝している」と話している。田淵氏の「器の大きさ」を感じさせるエピソードである。

『あぶさん』野村克也ら南海ホークスの選手 

  水島新司原作の漫画『あぶさん』。南海ホークスに入団した酒飲みの野球選手・景浦安武がパ・リーグの猛者と対決していくストーリーで、1973年から2014年の長きにわたり『ビッグコミックオリジナル』に連載された。

 『あぶさん』にも野球選手が実名で登場。とくに景浦に大きな影響を与えたのが、南海ホークスの選手たち。若手だった景浦に選手としての心得や技術指導を行った監督の野村克也氏や、一緒に夜の街に繰り出した江本孟紀氏、末期のホークスを一緒に支えた門田博光氏との「人間くさいやりとり」は、物語の「ウリ」となっていた。

  また、マサカリ投法の村田兆治氏、西武ライオンズ・東尾修投手、阪急ブレーブス・山田久志氏、近鉄バファローズ・野茂英雄投手など、パ・リーグの名投手と対決も見ものだった。

『ササキ様に願いを』佐々木主浩

  みずしな孝之原作の漫画、『ササキ様に願いを』。1993年に『まんがパロ野球ニュース』で連載された4コマ作品で、横浜ベイスターズの抑え投手として活躍した佐々木主浩氏が主人公だ。漫画ではササキ様に加え、三浦大輔現DeNA監督、佐伯貴弘氏、斎藤隆氏、石井琢朗氏、谷繁元信氏など、1998年に優勝・日本一を達成したメンバーが登場し、独自の世界観による漫画が繰り広げられた。

  ギャグ要素も強い作品だが、佐々木氏や三浦監督ら選手との関係は良好のようで、三浦監督のオフィシャルブログにみずしな氏、佐々木氏、三浦監督のスリーショットが掲載されたこともある。現代では肖像権の問題もあり、実名で登場するケースが少なくなった野球漫画。漫画のなかで躍動する現代の野球選手も見てみたいものだ。

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