『クレヨンしんちゃん』聖地のスーパー閉店決定で地元ショックーー漫画の舞台もアップデートされるのか?
■国民的名作漫画のあのスーパーが閉店へ
埼玉県が舞台になっている代表的な漫画と言えば、何が挙げられるだろうか。映画にもなった『翔んで埼玉』が真っ先に思い浮かぶ人が多いかもしれないが、アニメの聖地巡礼ブームを創った『らき☆すた』も重要な作品だ。『らき☆すた』同様に京アニがアニメ化した『小林さんちのメイドラゴン』には、越谷駅周辺の風景が登場する。とにかく数が多いので選ぶのが難しい。
国民的な人気作という意味では、『クレヨンしんちゃん』を外すことはできないだろう。ご存じ『クレヨンしんちゃん』は埼玉県の春日部市が舞台となっている。春日部駅にはしんちゃんをあしらった看板やポスターを多数見かけるし、駅前には「オラの街、春日部!」というキャッチコピーがあしらわれた巨大な看板が目に付く。まさに、キャラクターが地域に根差していると言っていい。
春日部市はこれまで『クレヨンしんちゃん』を町おこしに活用してきた。市のホームページによると、2004年には旧春日部市の市制施行50周年を記念し、しんちゃん一家を特別住民登録。2009年度からは「日本一子育てしやすいまち」づくりへの取り組みの一環で、「子育て応援キャラクター」として登場。2010年度からは、「まちの案内人」として市の広報活動で活躍中しているという。
そんな春日部には『クレヨンしんちゃん』の聖地がいくつもあるが、特に有名だった「イトーヨーカドー春日部店」が、今年の11月24日に閉店することが決まり、地元の人たちはもちろんファンの間からも惜しむ声が上がっている。
同店は1972年に開店し、現在地に1996年に移転してオープン。『クレヨンしんちゃん』の作中には「サトーココノカドー」という店名で登場し、しんちゃん一家行きつけのスーパーとして知られていた。2017年にはコラボ企画の一環で、屋上にある看板が「サトーココノカドー」に張り替えられたこともあった。コラボ初日にはしんちゃんが1日店長を務め、話題を呼んだ。このコラボ企画はその後も実施され、好評を博していた。
■市長もコメントを発表
春日部駅前のランドマークの閉店とあって、春日部市民の間でも衝撃は大きく、岩谷一弘市長がコメントを発表。「イトーヨーカドー春日部店には、開店以来50年以上の長きにわたり、市民の生活や雇用を支えていただきました。また、マンガ・アニメ『クレヨンしんちゃん』では『サトーココノカドー』として登場するなど、市民が集う憩いの場として愛されてきました」と、『しんちゃん』について市長が言及したほどであった。
岩谷市長は「これまでの功績に深く感謝申し上げます」と感謝に気持ちを述べつつ、「今後については、事業の継承者をお探しになるとお伺いしておりますが、従業員の雇用が維持されるとともに、市民生活に影響が少ない形で進むよう願うものであります」と語っている。
春日部は首都圏のベッドタウンとして発展し、春日部駅では現在、駅の高架化工事が進んでいる。だが、駅周辺で話を聞くと、駅近くに「ララガーデン春日部」があるものの、2016年に「西武春日部店」が閉店したことを機に(跡地は「匠大塚」になった)街の賑わいが薄れつつあるとの声も聞く。春日部駅は東武伊勢崎線と野田線が交わる拠点駅であるだけに、今後の街づくりの動向に注目が集まっている。