【漫画】とぼけた漫画家と方言の愛しいアシスタント、恋の行方は……? レトロで甘酸っぱいラブコメが話題

――本作の反響はいかがですか?

久世千香子(久世):これまでXで漫画を数々掲載してきましたが、ありがたいことに過去一番多くの方に読んでいただけたようです。寄せられた感想も好意的なものが多く、主人公のキミ子を気に入ってもらえて嬉しい限りです。

――本作の着想や描く原動力になったのは?

久世:中学生時代の夏の思い出が描くきっかけになりました。作品中でキミ子が親戚のお兄さんのお下がりばかり着ていたとありますが、自分もそんな感じだったんです。

――それについて詳しく教えてほしいです。

久世:中学生の頃、伯母がひまわり模様のワンピースをお土産に持って来てくれたのですが、いつもジャージやジーンズ姿だった自分にはそれを着るハードルが高く、照れくささの余りに「着ない」と母に言ってしまって……。その後ワンピースはあっさり他所の女の子の家に嫁入りして、後悔したことが忘れられません。

この思い出から、もしもボーイッシュな服装ばかりのキミ子にワンピースを勧めたらどうなるか考え始めたんです。キミ子もきっと、お洒落だけのためだったら抵抗を感じて断ると思いますが、仕事で着るならば仕方なく身に付けるだろう、そこでどんな心理になるだろう。と楽しみながら描きました。

――キミ子と先生に具体的なモデルがいますか。

久世:先生には若干モデルにした人がいます。彼は好きな異性ではなく逆のタイプで、以前の職場にいた二日酔いばかりしている年上の後輩。若い頃に海外で暮らしたり女の子にモテたり陽気な時代があり、50代になってからも本人いわく「自由でいたい」という人でした。

 あまりに突然会社を突然休んだり、人目に付きにくい所でサボったりと困った部分が多かったのですが、その翳りと陽気な部分を表現してみたいなと。それから別作品で先生を描き始めましたが、作者の性格のせいか単にとぼけた仕事好きな人になってしまったんです。

 あと余談ですが、キミ子を初めて描いた時は本当に2、3回だけ登場させる脇役のつもりでいたんですよ。でも初出演の漫画を上げた当時「キミ子を気に入りました」いうコメントをいただき、それが嬉しくて出演を増やしていきました。

――実際に漫画家とアシスタントが急接近することはあるのでしょうか。

久世:自分の場合、SNSに思い付いた内容を掲載しているアマチュアの立場なので、アシスタントは未経験です。ですが実際そういったカップリングがあるのか興味深く、事例があれば知ってみたいですね。以前、漫画に寄せられたコメントによると、漫画家とアシスタントの恋愛漫画の方は多く存在するらしいとのこと。

――キミ子はどこか、高橋留美子『うる星やつら』のラムを彷彿とさせる可愛さがあります。

久世:確かに時々、台詞を打ちながらラムちゃんを思い出すことがあります。「彼女は仙台なまりだ」という説もあるみたいですね。本作の舞台は私が昔住んでいた山形県。キミ子たちは山形県民で、先生は標準語を使う家庭で育ったという設定でした。

 台詞は山形県中央部の方言を標準語に寄せたものなのですが「それでも解読できない」という声が時々ありますよ。物語の時代は70年代ですが、最近では方言をつかう若い人も少なくなったようで時代の流れを感じます。もしかしたら家庭内では密かに使っているのかもしれませんが。

――作画についてこだわった点などがあれば教えてください。

久世:これまでは漫画の描き方を教えてくれた人が「顔を赤らめる場面は特別な時だけ。少な目に」と教えて下さったので、ずっと守り続けてきたんです。でも今回はそれに関係なく描きました。困惑、恥じらい、嬉しさ、怒りでの赤面。普段表情に変化が少ないキミ子だけに描いていて楽しかったです。

 先生に関しては初期に描いていた頃と比較して綺麗になってしまったので、もう少し変なおじさんとして描けば最後はもっと決まったかなと(笑)。

――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか?

久世:プロの方を始め、Xで描かれている作家さんたちにも影響を受けています。そのなかでも一番は昭和の作家さんで、高橋亮子先生です。『つらいぜ!ボクちゃん』や『しっかり!長男』など、現在は電子書籍で読めるはずです。

 温かみのある可愛い絵柄で、複雑な恋模様や人間ドラマが描かれていました。キャラクターひとりひとりの一途さ、一生懸命さがとても好きで、自分もそういったキャラクター達を描くことに憧れます。

――作家としての展望があれば教えてください。

久世:読んだ後に、癒されるものを描いていきたいです。実はこの漫画は描いた当時、激しく落ち込んでいたとある方に向けて描きました。名指しはしていないので、届いたかは不明ですが……。

 ここまでギャグを入れるのは照れもありましたが、その方が少しでも笑ってくれたらと、捨て身でポストするボタンを押しました(笑)。これからも読んだ方を少しでも笑顔にできたらと思っています。

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