宗教が生まれる前と後 世界はどう変わった? 世界史がみるみるわかると話題の書『宗教が変えた世界史』

■宗教はいかに広がり、信仰されてきたか

 ここ数年、統一教会の問題を筆頭に“宗教”が何かと社会を騒がせている。世界に視野を広げると、アメリカの同時多発テロ事件や、ロシアのプーチン大統領のウクライナ侵攻などの国家間の紛争も、もとをたどれば宗教間の対立に起因するケースが少なくない。いったい宗教とは何なのだろうか。宗教を正しく理解するには、宗教の歴史を紐解くことが必要である。

  この機会に宗教を深く知りたいと思った人におすすめしたい一冊が、『ビフォーとアフターが一目でわかる 宗教が変えた世界史』(祝田秀全/監修、朝日新聞出版/編著)である。宗教の定義は難しく、はっきりと言うことはできない。ただ、本書によると、目に見えない何かを敬う文化は何万年も前から存在し、科学技術が発達する前、人々は自然災害や飢え、病気などの説明が難しい現象を“神”が起こしたものだと考えていたのだ。

  そうした概念が宗教へと発展していったのは、紀元前7000年頃のことだという。そのきっかけは農耕が始まり、人々が同じ場所に定住するようになったことだ。定住を機に、人々は同じ神を信仰するようになった。これが宗教の原点になったと、本書は解説している。

  その後、どのような宗教が生まれ、信仰されてきたのか。宗教が政治と結びついて国家を揺るがし、科学技術にも影響を与え、絵画や音楽などの文化とも密接に結びついてきた。宗教は歴史上の重要な出来事と結びついているものが少なくない。したがって、宗教歴史をたどれば、必然的に世界の歴史全体を俯瞰することができるのだ。本書では、宗教が生まれる前と後で国家や社会がどう変化したのか、一目でわかるように説明されている。

■あなたはいくつできる? 歴史の転換点が見えてくるクイズに挑戦

 さて、本書をもとに宗教に関するクイズをいくつか出題しよう。世界史の授業で習ったことがあるという人もいるかもしれない。挑戦してみていただきたい。

Q1:世界最古の宗教といわれることが多い宗教は?

1:ゾロアスター教
2:キリスト教
3:道教

Q2:世界で“3番目”に信仰している人が多い宗教は?

1:イスラム教
2:ヒンドゥー教
3:仏教

Q3:第二次世界大戦後のアメリカで、若者のキリスト教離れが生み出した文化といえば

1:アニメ
2:ロック
3:和食ブーム

Q4:共産主義の父・マルクスは宗教をなんと呼んだ?

1:スイーツ
2:ごちそう
3:アヘン

  いくつわかっただろうか。答え合わせをしていこう。Q1は(1)のゾロアスター教。紀元前6世紀初めにゾロアスターが創始した。Q2は(2)のヒンドゥー教だ。長らく世界で信仰者数が3位の宗教は仏教であったが、近年はインドの人口が増加しているため、仏教を抑えて3位になったというわけだ。

  Q3は(2)のロック。1950年代以降、保守的なキリスト教の道徳意識に反発した若者たちの間で、カウンター=カルチャー(抵抗文化)が普及し、誕生したのがロックであった。Q4は(3)のアヘン。マルクスは宗教を“民衆のアヘン”と呼び、批判的な立場をとった。

  宗教を知ることは、社会問題をより深掘りすることができるし、教えを丹念に学べば混迷する現代社会を生き抜く羅針盤として活かすこともできるだろう。それに宗教は多くの歴史の転換点にもつながっていて、世界史についての理解も深めることができる。さらにいえば、20世紀に発展した科学技術がもとになり、新たな問題を引き起こしている21世紀だからこそ、宗教の存在意義がますます高まっているように思う。宗教と世界史を知ることは、今後の混迷時代を生き抜くための「鍵」となるのだ。

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