【漫画】好きなものに触れられない少女、その呪縛を解いたのはーーSNS漫画『ふれたらこわれそう。』が尊い
ーー作品を創作したきっかけを教えてください。
鮎:本作は6年ほど前、コミティア(一次創作物の即売会)に出展するために描いた作品です。片思いといった切なさを描いた作品にしようと考えるなか、まず『ふれたらこわれそう。』というタイトルから降りてきました。
そこから今の環境を壊すことに臆病な主人公を思いつき、なぜそんな思考になったのか、主人公が自身の価値観をどうやって変えていくのか……といった感じで物語を広げていきました。
ーー印象に残っているシーンを教えてください。
鮎:ニーナの価値観をユキが壊していく終盤のシーンが気に入っています。ユキはニーナの価値観を壊そうと思い自分のことを話したわけではないけれど、対照的な価値観がぶつかった結果、ニーナがいい方向へ変化していく様子を上手くまとめられたかと思います。
また画として気に入っているのは1、3、27ページ目の3枚です。上段と下段に別れた同じ構図の3ページに、上にはニーナが、下には壊したくないものを描いたシーンで。自分としては気に入っているシーンです。
ーーふたりが手をつなぐ、本作のラストシーンについて教えてください。
鮎:ニーナが「手を繋ごう」と願望を口に出したことで、それまでのニーナとユキの『ただの友達』という関係は一旦壊れました。
けれど「壊れても違うカタチにはできるかもよ」のセリフにあるように、些細な変化ですが、手を繋ぎ合う関係という一歩先に進んだ新たな形に生まれ変わった。冒頭で繋ぐことのできなかった手を繋いで並んで歩く、新しい関係性になった二人をラストシーンに描きました。
ーーニーナさんの表情が複雑な心情を物語っているように感じました。
鮎:本作に限らず漫画を描くにあたって、できるだけセリフを削って表情や仕草、空気感でキャラクターの感情や言いたいことが伝わればいいなと思っています。
例えば男女が2人で過ごしているなか、相手が「好きです」とか言わずとも視線とか仕草とか、その場の空気で「この人は今から私に告白しようとしている」と察することができるかと思います。そういった言葉を必要としない空気感を表現できればと、漫画を描く上で意識しています。
ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
鮎:5歳のときから「漫画家になりたい」という夢を抱いていました。家でアニメを見ていたとき、親に「これを作っている人は誰?」と質問して、そのときに漫画家という存在を知り漫画家になりたいと思うようになりました。保育園の卒園アルバムにも「大きくなったら漫画家になる」と書いていましたね。
ちゃんと漫画を描きはじめたのは高校生の頃で、社会人になってからも漫画の投稿やイベントへの参加は続けてきました。
ーー漫画を描き続けるモチベーションは?
鮎:例えば誰かの作品を見てインスピレーションやモチベーションを得た際に、それを表現する方法は人によってそれぞれだと思います。音楽を作ったり、洋服を編んだり、料理をしたり……。そんな中で、私にしっくりくる表現方法はやはり漫画を描くことなのだと思います。
漫画がコンテンツとして1番好きですし、読んでいて楽しいし。描いているときはつらくなることもありますし、ときに「なんでずっと、こんな面倒くさいことをやってるんだろう」と思うこともあります。ただ漫画が完成したときや作品を読んでもらったとき、いろんな方に「面白かったよ」とか「続きが読みたい」、「がんばってね」と言っていただけたときには、漫画を描き続けてきてよかったと思えます。
ーー今後の目標を教えてください。
鮎:自分が描きたいネタとか、こういう話を描きたいとか、こういうキャラクターを描きたいとか。日常を過ごすなかで思いついたアイデアや、表現したいもの、描きたいものがまだまだたくさんあるので、思いつく限りはずっと漫画を描くことを続けていきたいなと思います。
あと私は美少女フィギュアなどの造形物がすごく好きで……。いつか自分の描いた漫画のキャラクターをフィギュア化してほしいという密かな夢がずっとありました。人気のある作品しかフィギュア化されないと思うので、いつかヒット作品を生み出して、フィギュア化の夢を叶えたいです。