恋愛に関心のないゲーマーにどんな出会いが? アニメ化話題『悪役令嬢レベル99』の多面的な魅力

 アニメ『悪役令嬢レベル99 ~私は裏ボスですが魔王ではありません~』が1月9日深夜、TOKYO MX、MBS、BS11、AT-Xほかにて放送を開始する。原作は七夕さとりが手がける同名小説で、のこみによるコミカライズ版も人気の期待作だ。

 百花繚乱の異世界ファンタジー作品のなかでも、大きなトレンドになっている「悪役令嬢」モノ。乙女ゲームやロマンスファンタジー小説の世界で、あの手この手でヒロインを蹴落とそうとする性悪な令嬢に転生してしまった主人公が、プレイヤー/読者としての知識を活かしながら、悲惨な末路を変えるべく奮闘するーーというのが基本的な構造で、メタ的な面白さで多くのヒット作が生まれている。

 そんななかで、『悪役令嬢レベル99』の魅力はどこにあるのか。本作では、主人公がRPG要素の強い乙女ゲーム「ヒカユウ」の悪役令嬢で、エンディング後には裏ボスとしてヒロインたちの前に立ちはだかるユミエラ・ドルクネスに転生するのだが、面白いのは、彼女が恋愛パートに興味を持たない根っからのゲーマーだということだ。もともとおしゃれにも恋愛にも関心がなく、友人すらあまり必要としない自己完結型のパーソナリティであり、面倒な宮廷世界とかかわらず、平穏で自由な暮らしを望んでいる。

 そのためにゲーマー魂を燃やし、効率的なレベリングで人類未到の「レベル99」に到達してしまったユミエラ。一般的な悪役令嬢モノと同様に、周囲に勘違いされたり、政争に巻き込まれたりすることになるが、“圧倒的な能力を持つ無気力系主人公”である彼女は、心を揺らさず頼もしくサバイブしていく。乙女ゲームならではの濃厚なキャラクターたちとの人間関係にやや辟易としながら、ゲームとして能力を高めることには尋常じゃない関心を示すこともあって、結局、物語の中心になるところが面白い。

 このように、少女漫画より少年漫画的な魅力のある作品かと思いきや、ロマンスもきちんと描かれるのも見逃せないポイントだ。

 悪役令嬢モノの定番として、転生した主人公の人柄、優しさが少しずつ周囲に伝わっていき、本来のシナリオを塗り替えていく……という流れがある。しかしユミエラは、現世でもろくに人付き合いをしておらず、能力の高さとある種の鈍感力で周囲との関係を再構築していく。そのため「本来ならヒロインに惹かれるはずの攻略対象キャラクターたちが、すぐにこぞってユミエラに惚れる」ようなハーレム展開は訪れないが、おそらく現世ではなかった出会いが彼女を待っているのだ。

 頭はいいが変わり者で、関心を寄せる対象が偏っているが、好きなものに対して一生懸命。固定観念にとらわれず、あざとさはゼロ。人から寄せられる好意に鈍感で、お世辞にも器用とは言えない彼女が、「悪役令嬢で裏ボス」という本来なら極めて過酷な転生を果たした先で、ありのままを受け入れてくれる相手といい関係を築くことができるのかーーという“恋愛パート”にも注目して、多面的な魅力のある『悪役令嬢レベル99』を楽しんでもらいたい。

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